東京大学史料編纂所

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所報―刊行物紹介

大日本古記録 小右記四

 小右記は藤原実資の日記である。詳しくは小野宮右大臣記、略して「小記」ともいい、「野府記」、「続水心記」ともよばれる。
 自筆原本は現存せず、古写本として平安・鎌倉時代の写本である前田本と九条本、また鎌倉時代の写本である伏見宮本とが主なるものである。これらの写本は、いずれも廣本・略本を交え、互いに年月を相補い得るとともに同じ年月の部分も存する。
 本冊の所収年代は長和四年より寛仁元年までで、以上の三本の古写本を底本として、この古写本に含まれない年月については、秘閣本を底本として京都御所東山御文庫本その他の新写の諸本で対校したものである。左記の通り現在刊行進行中の第四冊目である。
 一、天元五年−長徳元年
 二、長徳二年−寛弘八年
 三、長和元年−長和三年
 四、長和四年−寛仁元年
 本冊は、実資の五十九歳より六十一歳までの間の日記で実資の大納言・右大将としての真面目な態度を伺い得るのほか、いわゆる小野宮流の儀式作法の実態を、年中行事や通過儀礼の描写の中に明瞭に発見することが出来る。これらは、実資が別に儀式作法のみを記した別記があって、後に本記の中にはめこまれた部分である。その他、三条天皇と道長のふくざつな関係を知り得るとともに、三条天皇の御譲位に関しては、道長が我が外孫、敦成親王(後一条天皇)を早く即位させたいため積極的に働きかけたことが、本書のみによって明らかになるところである。また、そのような道長の態度に対する実資の辛辣な批判が全般にわたってみられるのも興味深い。
(目次一頁、本文三〇三頁、岩波書店発行)
担当者 竹内理三・山中裕・近衛通隆・龍福義友


『東京大学史料編纂所報』第2号p.42