東京大学史料編纂所

HOME > ご案内 > 所長挨拶

所長挨拶

新たな史料編纂所の出発

榎原雅治 / Ebara Masaharu

榎原 雅治
えばら まさはる

東京大学史料編纂所は、国の内外に残されている古代から明治維新に至る日本の歴史に関係する史料を蒐集、研究するとともに、その成果をふまえて、日本史研究の基礎となる史料集を編纂・出版する研究所です。

本所の事業の淵源は、1793 年(寛政5 年)、江戸幕府の援助をうけて国学者塙保己一が開設した和学講談所に遡ります。明治になり、和学講談所の事業を継承して、当初は政府の直轄事業として、そして1888 年(明治21 年) 10 月からは帝国大学の事業として、日本史史料の研究・編纂を続けてきました。1901年(明治34年)に『大日本史料』と『大日本古文書』の第一冊目を刊行して以来、『大日本史料』『大日本古文書』『大日本古記録』『大日本近世史料』『大日本維新史料』『日本関係海外史料』『花押かがみ』『日本荘園絵図聚影』『正倉院文書目録』など、1000冊をこえる史料集を刊行しています。

史料編纂所は国宝「島津家文書」、国指定重要文化財「実隆公記」をはじめ、貴重な原本史料を多数所蔵しています。また、編纂の前提として、国内外において広く史料の調査・蒐集を行い、影写・謄写・模写・写真などの方法で、文書・日記・典籍・絵画などの膨大な複製史料を作成してきました。これらは本所の図書室やWebサイトにおいて研究者・市民に公開されています。2007~2009年には、書庫・閲覧室などの耐震補強工事のために、図書室業務を縮小せざるをえない事態となり、多方面にご迷惑をおかけしましたが、2009年6月に竣工し、2010年正月より、新装なった閲覧室において、ほぼ通常どおりの公開を再開しております。長い間ご迷惑をおかけしたことをお詫び致しますとともに、この間、ご支援、ご理解を賜りましたことを厚く御礼申し上げます。

史料の調査先は、国内にとどまらずアジア・欧米諸国にも及んでいます。中国、韓国、ロシア、オランダ、ポルトガル、フランス、アメリカ合衆国などの学術機関や日本学士院などとの交流により、在外日本関係史料の調査と蒐集を行って、多彩な日本史像をつくることに貢献しています。また、韓国国史編纂委員会・中国社会科学院近代史研究所との間で東アジア史料研究編纂機関協議会の共同協定書を締結し、「各国の史料の研究・編纂に関する情報と技術を共有し各国の歴史に対する理解と協力を推進する」(共同協定書第2条)ための活動にも取り組んでいます。

さて、史料編纂所は2009年6月、文部科学大臣によって「日本史史料の研究資源化に関する研究拠点」に認定されました。2010年度より史料編纂所では、これまで以上に、全国・世界各地の研究者との共同を深め、設定された課題に基づいて国内外の史料の系統的な調査を進めていくことになります。また、蒐集した史料を研究資源として共同利用をはかるための活動にも努めます。附属施設である「前近代日本史情報国際センター」では、これまでに進めてきたコンピュータを活用した歴史情報研究を一層発展させて、この共同利用・共同研究拠点事業を推進していきます。

もう一つの附属施設である「画像史料解析センター」では、歴史研究の新しい対象として注目されている肖像画・絵巻物・荘園絵図などの絵画史料や古写真・錦絵などの画像史料の分析を進めて、新しい研究分野の開拓に取り組んでいます。史料保存技術室では、写真・模写・影写・修補修復の技術によって貴重な文化遺産を保存し、研究や公開に利用するための事業を進めています。

また、本所所属の教員は大学院人文科学研究科、情報学環、教養学部において日本史教育を担当しているほか、国内外から若手研究員を受け入れて指導にあたっています。

私たちは、これまでの研究活動を継承しつつ、全国・世界の研究者との共同によって新たな研究を展開し、また、学界・社会により開かれた研究所としてさらなる発展をめざしていきたいと考えております。一層のご支援をお願い申し上げます。