【2018年度】
(1)課題の概要
中近世武家社会において作成されたさまざまな「合戦図」について、屏風絵あるいは合戦地図、そのほか主として武家文書群などに含まれるいくさにかかわる画像史料を広く収集・検討し、それぞれの描かれ方や諸本の系統、そこに描かれた内容などを研究する。くわえてそれぞれの「合戦図」の典拠となる文献情報(軍記・家伝など)を検討し、これらがいかなる理由で作成されたのか、(近世)武家社会における「戦国合戦」に対する歴史認識、また武家社会(とくに各大名家)においてこれら「合戦図」が作成された歴史的意義について明らかにする。またたとえば屏風絵(合戦図屏風)や合戦地図を比較検討することにより、これらが相互に関係していたのかどうかなど、個々のジャンルの「合戦図」の史料的性格を可能なかぎり明らかにする。
(2)研究の成果
この共同研究では、史料編纂所をはじめとする各地の史料所蔵機関などにおいて、合戦図および関連文献史料を調査し、合戦図のみの調査にとどまらず、戦国合戦図およびそれらが描かれる基礎史料となっている文書・記録類の情報をあわせて収集することにより、戦国合戦図を分析するうえでの情報蓄積を行ってきた。このうち、史料編纂所の所蔵する合戦図関連の模写史料については、3年の研究期間内に約40点の熟覧調査を終えることができ、個々の模写作成の経緯や原本史料の所在情報を集積した。
研究期間の最終年度にあたる今年度は、これらの成果公開に加えて、さらなる合戦図研究の展望を示す場として、国際研究集会「合戦のイメージ形成から実像を考える」を開催した。この研究集会は、史料編纂所と科学研究費補助金「戦国軍記・合戦図屏風と古文書・古記録をめぐる学際的研究」(研究代表者堀新氏・本共同研究所外共同研究員)との主催により、画像史料解析センタープロジェクト「長篠合戦図屏風プロジェクト」の研究成果をも盛り込んだものである。本共同研究では、共同研究メンバーから金子と林が報告を行うほか、近世記録類について精力的に研究を推進している金時徳氏(ソウル大学校)を韓国から招き報告をしていただいた。また所外共同研究者の井上泰至氏がパネルディスカッションの司会を担当した。当日は、近世武家社会におけるさまざまな「軍記」作成の実態や、後世に描かれた合戦関連の画像史料を読み解くための方法論が紹介され、学部生や外国人研究者を含め、のべ145名の参加者を得た。
また、この間の調査により得られた知見の一部を反映したものとして、所内共同研究者の金子拓氏の編集による『長篠合戦の史料学』が、所外共同研究者の井上泰至氏が湯浅佳子氏と編者となった『関ヶ原合戦を読む 慶長軍記 翻刻・解説』がそれぞれ刊行された。
このほかの成果は、適宜整理し文章化を行ったうえで、随時発表する予定である。
【2017年度】
(1)課題の概要
中近世武家社会において作成されたさまざまな「合戦図」について、屏風絵あるいは合戦地図、そのほか主として武家文書群などに含まれるいくさにかかわる画像史料を広く収集・検討し、それぞれの描かれ方や諸本の系統、そこに描かれた内容などを研究する。それぞれの「合戦図」の典拠となる情報(軍記・家伝など)を追究し、これらがいかなる理由で作成されたのか、(近世)武家社会における「戦国合戦」に対する歴史認識、また武家社会においてこれら「合戦図」が作成された歴史的意義について明らかにする。またたとえば屏風絵(合戦図屏風)や合戦地図を比較検討することにより、これらが相互に関係していたのかどうかなど、個々のジャンルの「合戦図」の史料的性格を可能なかぎり明らかにする。
(2)研究の成果
史料編纂所をはじめ、白石市・東北大学付属図書館・徳川美術館・岐阜市歴史博物館・茨城県立歴史館・松浦史料博物館などにおいて、合戦図および関連文献史料を調査し、合戦図の調査にとどまらず、戦国合戦図およびそれらが描かれる基礎史料となっている文書・記録類の情報を収集することにより、戦国合戦図を分析するうえでの情報蓄積を行っているが、これらは継続して積み上げてゆくことで最終的な成果に結びつくと考えている。
今年度の成果としては、関ヶ原合戦をめぐる所外・所内共同研究参加者それぞれの研究における知見の一部が、所外共同研究員井上泰至氏の編集にかかる『関ヶ原はいかに語られたか いくさをめぐる記憶と言説』に公表された。
また、東北大学付属図書館狩野文庫所蔵の、長篠の戦いの合戦図「長篠合戦之図」は、武田氏旧臣小幡氏の流れを引く軍学者小幡景憲の弟子杉山氏に伝えられてきたものであり、そのなかに書き込まれた覚書に、後年合戦の参加者たちが語ったとされる記事を見いだした。
松浦史料博物館においては、平戸藩松浦家における成瀬家所蔵屏風の模写制作に関わる成瀬正寿書状を調査した。この成果は今後文章化して発表する予定である。
【2016年度】
(1)課題の概要
中近世武家社会において作成されたさまざまな「合戦図」について、屏風絵あるいは合戦地図、そのほか主として武家文書群などに含まれるいくさにかかわる画像史料を広く収集・検討し、それぞれの描かれ方や諸本の系統、そこに描かれた内容などを研究する。くわえてそれぞれの「合戦図」の典拠となる文献情報(軍記・家伝など)を検討し、これらがいかなる理由で作成されたのか、(近世)武家社会における「戦国合戦」に対する歴史認識、また武家社会(とくに各大名家)においてこれら「合戦図」が作成された歴史的意義について明らかにする。またたとえば屏風絵(合戦図屏風)や合戦地図を比較検討することにより、これらが相互に関係していたのかどうかなど、個々のジャンルの「合戦図」の史料的性格を可能なかぎり明らかにする。
(2)研究の成果
史料編纂所をはじめ、久留米市立図書館・松平文庫・能登川博物館などにおいて文献史料を調査し、戦国合戦図およびそれらが描かれる基礎史料となっている文書・記録類の情報を収集することにより、戦国合戦図を分析するうえでの情報蓄積を行なっているが、これらは継続して積み上げてゆくことで最終的な成果に結びつくと考えている。
また、合戦図屏風については、画像史料解析センター「長篠合戦図屏風プロジェクト」と合同しての研究会・調査を複数回開催し、史料編纂所模写室で進めている東京国立博物館所蔵長篠合戦図屏風の模写にあたっての近世狩野派絵画の熟覧、同様の模写事業を進めている他機関の見学調査、合戦図屏風を複数所蔵する所蔵機関での熟覧について、できるかぎり多くの共同研究員の参加を得るかたちで実施した。歴史学(中世・近世)、国文学、美術史学など様々な専門分野の研究者が本共同研究に参加しているが、このようなかたちで開催し、活発な意見交換をしながら調査対象について議論を深めることは、それぞれの参加者にとって有益な経験となり、今後同様の調査を進めてゆくうえでの研究基盤構築につながっている。
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