東京大学史料編纂所

特定共同研究【複合史料領域】合戦の記憶をめぐる総合的研究

研究課題 戦国合戦図の総合的研究
研究期間 2016~2018年度
研究経費
(2016年度)130万円
(2017年度)120万円
(2018年度)53万円
研究組織  
研究代表者 黒嶋 敏(2018-)
金子 拓(2016-2017)
所内共同研究者 藤原重雄・黒嶋敏・畑山周平・及川亘・林晃弘・村岡ゆかり
所外共同研究員 阿部哲人(米沢市上杉博物館)・井上泰至(防衛大学校)・薄田大輔(徳川美術館)・川戸貴史(千葉経済大学)・白水 正(犬山城白帝文庫)・須藤茂樹(四国大学文学部)・高橋 修(茨城大学)・髙山英朗(福岡市博物館)・谷口 央(首都大学東京)・津田卓子(名古屋市博物館)・原 史彦(徳川美術館)・阪野智啓(愛知県立芸術大学)・堀 新(共立女子大学)・柳沢昌紀(中京大学)・山田貴司(熊本県立美術館)・湯浅大司(新城市設楽原歴史資料館)
研究の概要
  • 2018年度
  • 2017年度
  • 2016年度
【2018年度】
(1)課題の概要
中近世武家社会において作成されたさまざまな「合戦図」について、屏風絵あるいは合戦地図、そのほか主として武家文書群などに含まれるいくさにかかわる画像史料を広く収集・検討し、それぞれの描かれ方や諸本の系統、そこに描かれた内容などを研究する。くわえてそれぞれの「合戦図」の典拠となる文献情報(軍記・家伝など)を検討し、これらがいかなる理由で作成されたのか、(近世)武家社会における「戦国合戦」に対する歴史認識、また武家社会(とくに各大名家)においてこれら「合戦図」が作成された歴史的意義について明らかにする。またたとえば屏風絵(合戦図屏風)や合戦地図を比較検討することにより、これらが相互に関係していたのかどうかなど、個々のジャンルの「合戦図」の史料的性格を可能なかぎり明らかにする。

(2)研究の成果
この共同研究では、史料編纂所をはじめとする各地の史料所蔵機関などにおいて、合戦図および関連文献史料を調査し、合戦図のみの調査にとどまらず、戦国合戦図およびそれらが描かれる基礎史料となっている文書・記録類の情報をあわせて収集することにより、戦国合戦図を分析するうえでの情報蓄積を行ってきた。このうち、史料編纂所の所蔵する合戦図関連の模写史料については、3年の研究期間内に約40点の熟覧調査を終えることができ、個々の模写作成の経緯や原本史料の所在情報を集積した。
研究期間の最終年度にあたる今年度は、これらの成果公開に加えて、さらなる合戦図研究の展望を示す場として、国際研究集会「合戦のイメージ形成から実像を考える」を開催した。この研究集会は、史料編纂所と科学研究費補助金「戦国軍記・合戦図屏風と古文書・古記録をめぐる学際的研究」(研究代表者堀新氏・本共同研究所外共同研究員)との主催により、画像史料解析センタープロジェクト「長篠合戦図屏風プロジェクト」の研究成果をも盛り込んだものである。本共同研究では、共同研究メンバーから金子と林が報告を行うほか、近世記録類について精力的に研究を推進している金時徳氏(ソウル大学校)を韓国から招き報告をしていただいた。また所外共同研究者の井上泰至氏がパネルディスカッションの司会を担当した。当日は、近世武家社会におけるさまざまな「軍記」作成の実態や、後世に描かれた合戦関連の画像史料を読み解くための方法論が紹介され、学部生や外国人研究者を含め、のべ145名の参加者を得た。
また、この間の調査により得られた知見の一部を反映したものとして、所内共同研究者の金子拓氏の編集による『長篠合戦の史料学』が、所外共同研究者の井上泰至氏が湯浅佳子氏と編者となった『関ヶ原合戦を読む 慶長軍記 翻刻・解説』がそれぞれ刊行された。
このほかの成果は、適宜整理し文章化を行ったうえで、随時発表する予定である。