東京大学史料編纂所

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特定共同研究【中世史料領域】中世大規模・広域史料群の研究資源化

研究課題 春日大社所蔵「大東文書」の調査・撮影
研究期間 2010~2012年度
研究経費
(2010年度)70万円
(2011年度)80万円
(2012年度)80万円
研究組織  
研究代表者 藤原重雄
所内共同研究者 末柄 豊・及川 亘・谷 昭佳・高山さやか
所外共同研究員 松村和歌子(春日大社宝物殿)・幡鎌一弘(天理大学)・清水健(奈良国立博物館)
研究の概要
  • 2010年度
  • 2011年度
  • 2012年度
【2012年度】
(1) 課題の概要
春日社旧社家である大東家には、同家に伝来してきた記録・文書や、明治期に散逸を懼れて収集された南都関係史料が、現在も多数所蔵されている(「大東家史料」と称す)。戦前の史料編纂所による史料採訪によってその一部は目録化されているが、同時期に調査された春日大社および辰市家・千鳥家など他の旧社家所蔵史料とは異なって、影写本・謄写本が作成されておらず、「大東家史料」の大部分はこれまで学界に紹介されていない。その全体像を把握して整理・調査・撮影を進めつつ、なかでも中世から近世初頭にかけての神事日記を中心に検討を加えて、今後の研究編纂に利用できるようにする。特に『大日本史料』第十二編の次冊以降の出版対象となる元和九年の『中臣祐範記』原本(従来は抄出本で知られていた最晩年の日記)については翻刻を行って、本所出版物に反映させる。
(2) 研究の成果
二〇一一年度末に刊行を計画していた「大東家文書」の目録・報告書であるが、春日大社奉納分とは別に、一具・同種の新出古文書が大東家に残されており、これらを調査・撮影し、まとまりとしてより整った形で本年度に刊行した(『春日大社所蔵 大東家文書目録』東京大学史料編纂所研究成果報告2012-5)。目録本体に加えて、新出分古文書や全体は未紹介の院政期の『皇年代記』に、『古今最要抄』清祓事などを翻刻も併せて掲載し、内容の充実を図った。また、幡鎌・及川「『春日社司中臣祐範記』元和九年」(『東京大学史料編纂所研究紀要』二三、二〇一三年)として、本年の課題に掲げた翻刻を行った。奈良で開催されてきた『祐範記』輪読会の成果と、『大日本史料』第十二編の蓄積とを融合させた共同研究である。本紀要には、鎌倉時代の若宮神主家の神事日記でありながら、これまで未翻刻であった分を、松村・藤原「東京大学史料編纂所所蔵「弘長三年春日若宮神主中臣祐賢記」(『春日社旧記』のうち巻六)」として、お茶の水図書館所蔵断簡と併せて紹介している。この他にも大東家所蔵史料からは社記断簡などを、藤原・坪内綾子・巽昌子「中世春日社社記拾遺」(『根津美術館紀要 此君』四、二〇一三年)に紹介した。同雑誌には、松村「春日宮曼荼羅と社頭景観の史料」も掲載され、本共同研究で利用できるようになった史料を活用した研究を進めている。また本年度も、奈良国立博物館の特集陳列「おん祭と春日信仰の美術」に協力した。
 本年度の調査で、大東家所蔵分の中世部分がおおむね把握され、公開は準備中であるが、中世から近世前期の神事日記について撮影を終えた。また、内容は謄写本で知られているが、辰市家所蔵になる中世から近世前期の神事日記をある程度まとまった分量で撮影した。春日大社・大東家・辰市家などに分蔵状態となっている史料群の統合的な把握のための基盤を徐々に整えているところである。積み残しの課題としては、Hi-cat plusおよび古文書ユニオンカタログへの文書目録の書誌データ搭載があり、現在は閲覧室での単純な画像閲覧での提供となっている。