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特定共同研究【近世史料領域】近世大名家史料の研究資源化

研究課題 近世初期大名家における大身家臣史料群の研究資源化
研究期間 2016~2017年度
研究経費
  • (2016年度)120万円
  • (2017年度)110万円
研究組織 研究代表者 小宮木代良
所内共同研究者 佐藤孝之・及川亘
所外共同研究者 大平直子(佐賀市教育委員会)・志佐喜栄(多久市郷土資料館)・清水雅代(佐賀県立図書館)・田久保佳寛(小城市教育委員会)・藤井祐介(佐賀県立佐賀城本丸歴史館)・本多美穂(佐賀県立図書館)・松田和子(佐賀県立図書館)
研究の概要

【2017年度】

(1)課題の概要
近世初期大名家における政治史研究の深化にとって、現時点でもっともその分析が俟たれる各大名家の家臣史料、とりわけ、相当量以上の史料から成る大身家臣家の史料の分析が、これからの中心課題のひとつとなると思われる。本計画は、前期の拠点共同研究における近世史料領域の課題「佐賀藩家臣多久家史料の研究」を前提にして、近世前期の佐賀藩の政治史分析の深化にとって重要な多久家史料の分析を進め、さらに、分析にあたっては、佐賀藩と当該期にも政治的関係を深くしていた九州諸藩の大名家文書およびその大身家臣家文書、佐賀藩執政の位置にあった多久家の同僚でもある佐賀藩大身家臣家史料(坊所鍋島家史料等)との関連性を確認・整理していくことにも注目する。このような近世初期九州地域に関する残存史料の分析・整理を通じて、政治的ネットワークの明瞭化のための作業を進めることを目的とする。

(2)研究の成果
2017年度に行った計2回の研究会においては、あらたに68点の分析を終えた(先行する成果との累計で366点。当面の対象としていた近世初期部分の多久家史料の全体は700点余である。)昨年度に引き続き、これまでの成果のうち確定できた分を史料一点毎にデジタルデータの形でまとめて集約する作業を進めている。また、鍋島勝茂の花押が年次順に一覧できるデータベースについても、年次比定が確定した史料の分の増加につれて充実しつつある。こうした成果を踏まえて、11月26日に行ったシンポジウムでは、「近世前期における公儀軍役負担と佐賀藩」のテーマを立て、以下の4本の報告を行った。
個別報告1.及川 亘「現場監督する大名―多久家文書にみる公儀普請―」
個別報告2.大平直子「城割だって公儀普請?!―多久家文書にみる大坂冬の陣後の城割普請―」
個別報告3.清水雅代「佐賀藩の長崎警備―正保2年の鍋島勝茂書状を中心に―」
個別報告4.小宮木代良「明清交替情報と佐賀藩の長崎番役」
上記の報告は、共同研究内で蓄積されてきた各文書の年次比定、佐賀藩主・家臣等の所在情報、花押の年次検討、等を土台にしながら、さらに無年号や日付のない文書等についても年次の検討等を行った結果得られたものである。
多久家文書の残された部分の共同作業による分析を完成させることにより、近世初期政治史研究の水準をさらに飛躍的に高めることができる。来年度以降も科研費によるプロジェクトを継続することで、現段階までに得られた成果の発展をはかりたい。