編纂・研究・公開

特定共同研究【海外史料領域】在外日本関係史料の研究資源化

研究課題 ロシア科学アカデミー東洋古籍文献研究所所蔵サハリンアイヌ交易帳簿の研究
研究期間 2010~2010年度
研究経費
  • (2010年度)150万円
研究組織 研究代表者 保谷 徹
所内共同研究者 小野 将・松澤裕作
所外共同研究者 東 俊佑(北海道開拓記念館)・谷本晃久(北海道大学)・ 麓 慎一(新潟大学)
研究の概要

【2010年度】

(1)課題の概要
 ロシア科学アカデミー東洋古籍文献研究所(旧東洋学研究所、サンクト・ペテルブルグ市所在)には、19世紀初頭に日本人商人とサハリン島のアイヌとの間でおこなわれた交易の帳簿が保存されている。「大福帳」と「簾貸帳」と題された日本語の横帳二点である。いずれも文化2(1805)年から翌年にかけて、サハリン(カラフト)のクシュンコタン番屋で作成・保管されたものであり、1806年、レザノフの部下フヴォストフらの襲撃によってロシア側へ持ち去られたものと考えられる。本研究では、アイヌ交易研究に詳しい関係研究者とともに帳簿の正確な解読・翻刻と分析をおこなう。東洋古籍文献研究所との覚書にしたがい、ロシア語への翻訳作業を支援して史料集としての出版をも展望する。また、東洋古籍文献研究所からは研究協力者のワジム・クリモフ氏を招聘して研究会を開催し、サンクト・ペテルブルグ市において帳簿の原本調査および関連史料の調査等をおこなう。

(2)研究の成果
 研究対象とした二つの帳簿、「大福帳」・「簾貸帳」の画像データには多くの欠落箇所があったが、これを今回の現地出張調査により入手・補完することができた。これにより初めて帳簿の全容が明らかとなり、その記載内容を確定することができた。翻刻・解読作業については、原本調査とともに下原稿の校正を進め、「大福帳」は完了できなかったものの、「簾貸帳」については作業をほぼ終えることができた。これによって帳簿記載の本格的な分析が可能となった。
 帳簿の記載内容については研究会を開催し、難解な記述部分についての理解・知識の共有化をめざした。この分析を通じて、当該期の日本史・対外関係史研究のみならず、サハリン(カラフト)・アイヌ民族の歴史とその生活文化についての理解を深めることができた。また、研究協力者のクリモフ上級研究員とともに原本調査をおこない、日露両国の研究機関における研究交流と情報共有を進めることができた。 また東京においては、国立公文書館所蔵の近世樺太関係史料の関連調査をおこない、「瓦剌弗吐島雑記」・「北裔備攷草稿」・「蝦夷志料」(北蝦夷部の一部)について、デジタル画像データを収集した。