東京大学史料編纂所

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所報―刊行物紹介

入来院家文書CD-ROM版

 「入来院家文書」は薩摩国入来院の領主入来院家に伝来した文書であるが、1929年、朝河貫一(エール大学助教授、のち教授)がこの文書の英訳を主体としたThe Documents of Irikiを米国で刊行したことにより、世界的に知られることになった。本CD-ROMは、本所が所蔵する「入来院家文書」原本のカラー画像と釈文、朝河による英訳文を対照可能なかたちで収録し、年表・地図・現況写真・参考文献などを付録としたものである。
 釈文については、1957年に朝河貫一著書刊行委員会編で日本学術振興会より刊行された『入来文書』(英文篇は1929年版をそのまま復刻し、和文釈文篇を全面的に作り直したもの。1967年に新訂版が出される)を参考にしたが、古文書原本にあたって全面的に校訂しなおした。無年号文書の年次比定を改めたところもある。また古文書画像については、数紙からなる文書は、画像を接合して全体像を提示する、錯簡をデジタル上でただす、文字がある場合の紙背を表示するなどの工夫を試みた。ただし加工以前の画像も収録してある。このような内容上の工夫やその背景にある考え方については、『東京大学史料編纂所附属画像史料解析センター通信』第8号(2000年1月)に報告したので、参照されたい。なお釈文の作成と年次比定については山家浩樹が、画像形式の検討については吉田成が協力した。
 本CD-ROM版は1957年版『入来文書』の覆刻版とセットで販売されているが、本所が関与しているのはCD-ROM版の部分のみである。
(CD-ROM1枚、紀伊國屋書店発行)
担当者 井上聡・久留島典子・近藤成一・高橋典幸


『東京大学史料編纂所報』第35号p.35