東京大学史料編纂所

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所報―刊行物紹介

日本関係海外史料 オランダ商館長日記 原文編之一

 日本関係海外史料(Nihon Kankei Kaigai Shiryo : Historical Documents in Foreign Languages Relating to Japan)は、日本に関する外国文の代表的な史料を、最良の底本によって、近代の字体に翻字し、厳密な校訂を施し、欠失した箇所のあるものはその逸文をも拾収し、複本のあるものはこれと校合しつつ、所要の脚注を加え、索引を付した原文編と、これを邦文に譯出した譯文編との二本建てで逐次刊行するもので、昭和四十八年度の創刊である。
 この叢書の最初の収載史料がオランダ商館長日記である。オランダ商館長日記(Diaries Kept by the Heads of the Dutch Factory in Japan : Dagregisters gehouden bij de Opperhoofden van de Nederlandsche Factorij in Japan)は、鎖国以前は平戸に、鎖国以後は長崎に駐在して対日貿易に従事したオランダ商館にあったその館長が連年書き残した公務日記で、若干の闕損があるが、一六三三年(寛永一〇年)から一八五五年(安政二年)に及び、ヘーグのオランダ国立中央文書館に伝存している。本書は、これを底本として、その古い手書きのオランダ文を翻字した原文編とこれに対応する邦文を収める譯文編から成る。
 この『オランダ商館長日記』原文及び訳文の刊行については、一九七二年八月三十一日の問合わせに対して、所蔵者より、史料は公開の建前なので特に許可を求める必要はないが、刊行の際は一部寄贈して頂ければ幸甚である旨の返答を得た(Mr. M. P. H. Roessingh, Eerst Afdeling [Centrale Regeringsarchieven voor 1795] Algemeen Rijksarchief, 's-Gravenhage. No. C281, September 21 1972)ので、各巻扉には、了解済の文言を明記した。
 本冊は、その原文編之一(自寛永十年八月、至寛永十二年十一月、Original Texts Selection I. Volume I. September 6, 1633-December 31, 1635)として、第八代商館長ニコラース・クーケバッケル(Nicolaes Couckebacker)在職期間中の日記の最初の部分、一六三三年九月六日の着任より一六三五年十二月三十一日まで二年半の記事を収める。タイオワン事件が起した日蘭貿易の危機を克服する使命を帯びた商館長・商館員の尽力が続き、第一回鎖国令がオランダ側に有利な形で発布されるいきさつをつぶさに知ることができる。巻頭に英文解題及び凡例を、巻末に、バタフィア総督ヘンドリック・ブルーワーの訓令(Instructie voor Nicolaes Coeckebacker, enz., om des Compagnies dienst in Japan te bevoordeeren actum in't Casteel Batavia adij ultimo Meij 1633)と、東五島海域測量日記(Journael van de rijse naer Oosten Goto bij Hendrijck Arentsen ende Jan de Vos van den 29. Junij tot den 15.Julij 1634)とを収める。
 本冊はこの叢書の第一巻であるため、とくに、弥永所長の序文を冒頭に掲げて、本所の事業紹介、海外史料蒐集のいきさつ『日本関係海外史料目録』と本叢書との関係について説明した。
本書の発刊に当っては、かねてからM・A・P・メイリンク・ルーロフス女史と永積洋子女史の助言を得るところがあったので、この旨を凡例で明記した。
(序文二頁、図版一葉、目次一頁、解題一二頁、例言二頁、本文三四二頁、添付正誤表八頁)
担当者 金井圓・加藤榮一


『東京大学史料編纂所報』第9号p.97