東京大学史料編纂所

HOME > 編纂・研究・公開 > 所報 > 『東京大学史料編纂所報』第4号(1969年)

醍醐寺出張報告

 昭和四十三年八月十八日から二十四日まで、京都市醍醐寺に出張して、昨年度に引き続いて同寺所蔵の古文書・古記録の調査・撮影を行った。本年は第六十八函より第七十三函までの六函を調査し、これを撮影してマイクロフィルム五鑵に収めた。
 本年調査の文書・記録は、仏教儀礼に関するものが主であって、理性院関係のものが多く、平安時代末期以後の諸法会・御修法・護摩の巻数案・表白・願文・諷誦文・祭文等及び皇室併に室町将軍家の御産その他の祈祷・仏事に関する記録・文書等で、大部分は室町時代以降のものであったが、間々鎌倉時代の文書も交っている。また文安四年の醍醐寺鎮守修理遵行状、文明十二年の六条八幡宮造営事状、永禄六年醍醐山如意輪堂勧進帳、江戸時代の塔婆修理材木目録など造営関係の文書、室町中期頃の醍醐寺寺領目録、慶長十五年以後の諸法度、寛永十八年の上醍醐町石之次第、永禄九年の道三医事雑記等も含まれている。
 花田は其後更に三日間に亘って、京都市中の諸寺院に所蔵されている善恵証空の肖像及び筆蹟に就いて調査を行った。誓願寺に於ては証空の画像一幅及び筆蹟一幅、褝林寺(永観堂)に於ては証空の画像二幅及び筆蹟二幅(実は蓮生筆観門義草案)、光林寺に於ては証空の画像一幅、三鈷寺に於ては証空の木像を、京都国立博物館に於ては三鈷寺寄託の証空画像一幅・観門義草案一冊・三鈷寺縁起六巻を調査した。然し善峰寺に於ては都合悪しく調査することを得なかった。そのうち誓願寺所蔵の画像及び書状は、高沢がその写真を撮影し、大日本史料第五編之二十三に図版としてこれを掲載した。
 (花田雄吉・今泉淑夫・高沢実)


『東京大学史料編纂所報』第4号p.99