東京大学史料編纂所

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所報―刊行物紹介

大日本古文書 家わけ第十九 醍醐寺文書之五

本書は京都市伏見区真言宗醍醐派総本山醍醐寺所蔵の約七〇〇函のうち、第七函の後半より第八函の前半に至る文書及び記録等一〇九点を収める。その年代は平安時代より近世末に散布し、内容的にも文書群としての特徴(例えば第四冊が比較的旧行樹院関係の文書を多く載せた如き)を有しないが、一冊の中で量的に大きな比重を占めたものは、応永十六年の具注暦の裏に記された同十七年の三箇吉事雑記(964)、江戸初期における三寶院末寺の全国的分布を知ることの出来る末寺目録(967)、平安時代の裏文書をもつ東寺年中雑事(972)の如き記録類であり、夫々の分野における利用価値をもつことはいうまでもない。また個別文書では、本冊でも依然として年次を確定しえなかったが、1001号所収の二通の志摩国泊浦関係文書が興味をひく。この一連文書は既刊の808・811・822のほかにも存在が知られ、室町初期における幕府中央、守護、在地の一揆的武士団、それに棚橋法楽寺を媒介とする醍醐寺、以上四者のからみ合いが窺われる史料といえるであろう。
なお本巻担当者は川崎庸之・笠松宏至である。
(目次一一頁、本文三四六頁、花押等一覧九頁)


『東京大学史料編纂所報』第1号p.30