東京大学史料編纂所

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所報―刊行物紹介

日本関係海外史料目録5 オランダ国所在文書(5)

Historical documents relating to Japan in foreign countries: An Inventory of microfilm acquisitions in the Library of the Historiographical Institute (Shiryo Hensan-jo), the University of Tokyo. Vol. V. The Netherlands, Part V.
本冊はオランダ国所在文書の第五部として、へーグ市オランダ国立中央文書館(Het Algemeen Rijksarchief, 's-Gravenhage)所蔵文書のうち「シナ広東オランダ商館文書」(Ned, Fact. Canton China, Nos. 1-393)及び「アムステルダム東インド会社受信シナ関係文書」(植民地文書)のうち一七九二年以前の部分(Kol. Arch. 3889-3962)を収める。ともに、日本オランダ商館文書と同様、早く同文書館に移管されたもので、前者は三一巻二五、四三八コマ、後者は三一巻二五、八二六コマのネガ・フィルムに収められている。既刊四冊と本冊によりオランダ編は完結した。
以下に所収史料の概要を記す。(この概要は本冊中の当該部分に付した英文の邦訳である)
§8 シナ広東オランダ商館文書、一七三九-一八二二年
(Nederlandsche Factorij, Canton, China, 1739-1822)
この記録群については、一九三六年オランダ国立中央文書館のボルドゥアン氏(J. J. G. Bolduan)による分類があり、本書もその分類を全面的に踏襲している。
一七三四年以前の蘭清貿易は、当初出合貿易(一六二四−一七二八年)の形をとり、その後両国間の定期的直接貿易(一七二八−一七三三年)の形に進み、さらにその後はバタヴィアのオランダ総督の統制下に広東商館が経営する形をとった。一七五六年になると、バタヴィアの管轄から離れて東インド会社の直轄となり、アムステルダムに対シナ理事会ができ、上乗たち(supercargas)の主宰する広東商館は商務理事会(Commertie-raad)を編成して貿易に従事した。フランス革命の結果、中立国船舶の傭船により航海を続行したこともある(一七八〇−一七八四年)。シナ広東商館は一八二二年八月二一日付の勅令第八四号により接収され、その貿易活動は終りを告げた。
A 商務理事会文書、一七三九−一八二二年(Archief van de Commercie-raad, 1739-1822)
1 一般資料(Stukken van algemeen aard)
商務理事会の保存した文書で、決議録(Resolutien, 1742-1809)、商館日記(Daghregisters, 1743-1816)、バタヴィア又は本国からの訓令(Instructien, 1739-1805)、同来翰集(Ontfangen brieven, Bataviasche documenten, 1747-1807)、一般商務報告(Generaal rapporten, 1742-1807)、発翰控(Uitgaane papieren, 1744-1796)その他のカントン商館の貿易活動に関する基本資料で、商務理事会文書の大半を占める。
2 特殊資料(Stukken van bijzonderen aard)
一七八八年から一八二〇年に及ぶマカオ広東間往復文書、一七九六−九七年のアルメニア商人アヴィトマル氏(Avitmall)に関する文書、一八〇二年のイギリス艦隊の出動に関する文書、一八○八年のポルトガル文で書かれた文書、その他、特殊な事件に関する文書から成る。
3 シナ北京宮廷へのオランダ使節及びイギリス使節の派遣に関する資料(Stukken betreffende Nederlandsche en Engelsche Ambassades naar het Hot te Peking)
一六七九年のファン・ホールン(Pieter van Hoorn)の、一七九四年のティツィング(Isaac Titsingh)の、及び一七九六年のド・ワハト(de Wagt)の各オランダ使節と、一八二八年のイギリス使節の北京派遣に関する記録から成る。
4 財政資料(Stukken van financieelen aard)
一七九七年から一八〇七年に及ぶ短期間の元帳(Negotie Groot Boeken)、仕訳簿(Negotie Journalen)、給与台帳(Zoldij-boeken)、欠損帳簿(Guastos-boeken)その他会計記録を含む。
B 拡大商務理事会事務局文書、一八〇〇−一八一五年(Archief van den Secretaris van den Breeden Raad, 1800-1815)
シナ広東商館で作成された公証書類の登録簿(Protocol)である、
C 付録、一八〇〇−一八一〇年(Aanhangsel, 1800-1810)
オランダがシナ貿易のため傭入れたロシア船及びハンブルク船に関する会計記録から成る。
§9 アムステルダムの東インド会社受信シナ関係文書、一七二九−一七九四年(Overgekomen brieven uit China, 1729-1794)
シナ貿易に従事したオランダ商人たちが本国の東インド会社に送った文書の原本から成る独立の記録群であり、ここには一七二九年から一七九四年までを収めた。編纂の便宜上、本目録では、貿易形態の相違に従って、つぎの三つの時代区分によって著録した。
(1)一七二九−一七三四年、この部分については東洋学報第四一巻第一号(一九五九年)に略目録がある。
(2)一七三四−一七五七年
(3)一七五八−一七九四年
(前附一四頁、本文九〇頁)
担当者 岡田章雄・金井圓・加藤栄一


『東京大学史料編纂所報』第1号p.36