編纂・研究・公開

所報 - 刊行物紹介

1.東京大学総合図書館所蔵貴重書等の調査・撮影

 二〇二〇年度には、既報告の下記書目、
○政事要略 [A00-6073] 一六冊
○舟橋様御文庫書籍目録 [A00-6386] 一冊
○御室和書目録(本朝書籍目録) [A00-6190] 一冊
○山槐記 第三(除目部類) [G27-731] 野宮本 一冊
○伏見院御記[G27-732] 野宮本 一冊
○天皇元服部類記[G26-965] 野宮本 一冊
および後掲の書目につき、外部業者(インフォマージュ)によるデジタル撮影を行った。画像は東京大学学術資産等アーカイブズ共用サーバに搭載してWeb 公開、また史料編纂所データベースにも登録の予定である。参考調査係の谷口瑞枝氏には諸般お世話になった。併せて謝意を表す。
○右文故事[A00-6268] 一五冊
 (一~三)御本日記附注 上・中・下
 (四~六)御本日記続録 上・中・下
 (七・八)御写本譜 上・下
 (九~一三)御代々文事表 一~五
 (一四・一五)御代々詩歌 上・下
 ※一帙。袋綴冊子。版心「右文故事 巻 正斎」とある罫紙を用いた稿本(中書本)。(一)の右端「共十六冊」とあり、「慶長勅板考」を欠く。(二)は転写清書本で、罫紙を用いず。見返朱方印「東京帝国大学図書印」、登記番号「B67112」。
○古瓦譜[A00-6416] 一冊
 ※薮中五百樹「藤原貞幹『古瓦譜』『仏刹古瓦譜』(臨山閣文庫尚古斎本)の検討(上)」(『帝塚山大学考古学研究所研究報告』XVIII、二〇一六年)参照。
○古写本茶乃湯珍書(山上宗二記)[YB20-49] 一冊
 ※袋綴冊子。帙あり。縦二四・八×横二〇・〇cm。薄茶色表紙、左上後補貼外題(白雲母引き)「古写本茶乃湯珍書/全」。四目綴じ。表紙見返し、朱方印(大)「東京帝国大学図書印」、青スタンプ「B6079」。右下に朱方印「☒☒之印」。第一・四四紙、舟形印「渡部文庫珍蔵書印」(渡部信)。表紙裏打ち紙に書きかけ「百五十九年ニテ日本及正二」。返り点、ヨミガナ等あり。墨抹あり。裏打ちあり、一部に墨付あり、書き損じ。「三国諸宗通覧上巻/覚斎居士述」「三国諸宗通覧目次」など、書状の手習い。四四丁ウ末尾左下に丸印「二酉閣」。墨付四四丁。折山の部分に丁付あり、「二」~「四十五」。九丁ウに貼紙「此間ニ七台之事ト可書也」。五島美術館編『山上宗二記 天正十四年の眼』(一九九五年)No75出陳、田中秀隆「『山上宗二記』諸本の検討」(茶の湯懇話会編『山上宗二記研究』三、三徳庵、一九九七年)諸本38(天正十八年・三月のみの年紀を持つ皆川広照宛伝書)。渡辺誠一『山上宗二の世界』(私家版、一九九六年。『山上宗二記研究』三所収の「『山上宗二記』の成立と諸本」は講演録版)も参照。渡辺著に全文翻刻のある諸本33の尊経閣本と比較すると、「歴史序論」「茶室図」を中心に省略・簡略化がある。本写本の「歴史序論」は渡辺「『山上宗二記』の諸写本の比較研究(一)」(『明治大学教養論集』二五七、一九九三年)二二・二三頁に翻刻。 書風は古様で江戸初期とみなせるが、本文は取意で、指図も割愛した略本ならん。
(藤原重雄)

『東京大学史料編纂所報』第56号