
すべての歴史学研究の基礎は、研究材料としての史料の収集、精確な読解、史料批判にあります。
史料は伝来したところに保存することが原則です。そのため、史料編纂所の研究者は日本全国・世界各地に史料調査に出かけます。そこで見出した注目すべき史料について複写を行います。史料編纂所では、発足時から影写(敷き写し)、謄写(見取り写し)、模写という技術を用い、また成熟した写真技術や最新のディジタル画像技術を駆使しています。こうして膨大な日本史史料コレクションを築き上げてきました。勿論、貴重な原本史料も多数所蔵しています。
収集された史料は精確に読解されねばなりません。文字を正しく読むことにも長い修練が必要ですが、さらに正しく解釈するために、史料の性格や歴史的背景を研究することが求められます。この、史料の様式・機能、形態・素材、伝来や史料群の形成、管理や情報化などに関する研究は、「史料学」と呼ばれています。史料編纂所では、この史料学の研究を推進すべく、その特長を活かして、内外の研究機関・研究者との共同研究も組織しています。また、大学院授業、日本学術振興会特別研究員受け入れ、プロジェクト研究参加を通じて、この分野の多数の院生・若手研究者の養成に努めています。
史料採訪史料編纂所では、日本全国・世界各地に史料調査に出かけ、注目すべき史料について複写を行い、史料集編纂のための素材となる史料を収集してきました。このような作業を史料採訪と呼んでいます。
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文科大学時代の史料編纂掛(1930年)
史料を研究素材として翻刻・再編成する作業が「編纂」です。史料編纂所では、事件が起きた時間の流れに沿って関連史料を集める編年史料と、史料群の構成と内容を精密に復元する編纂史料とに分けて編纂を行っています。『大日本史料』『大日本維新史料 編年之部』は編年史料集であり、『大日本古文書』『大日本古記録』『大日本近世史料』『大日本維新史料 類纂之部』『日本関係海外史料』などは編纂史料集です。
明治34年刊行の
『大日本史料』(第六編・第十二編)
『大日本古文書』(編年文書)
蒐集、整理、研究した史料を広く一般の利用に供するために、史料集の出版を行っています。史料編纂所では1901(明治34年)から、第二次世界大戦末期と終戦後の一時期を除き、出版事業を続けてきました。現在も年間十数冊を刊行し、総点数は1100冊以上に及んでいます。
従来の「史料の研究・編纂・出版」の基礎の上に、総合的な歴史情報データベースを構築する事業(前近代日本史情報国際センター)、対外関係史料の蒐集・分析を視野に入れた国際交流事業、画像史料を蒐集・分析する事業(画像史料解析センター)などにも、積極的に取り組んでいます。