朱印船のアジア史的研究

活動報告

2016年3月31日~4月3日アメリカ合衆国のシアトルで開催されたAAS (Association for Asian Studies)の第75回Annual Conferenceで3月31日にパネル報告を行いました。


Panel 16: "State Letter" (Kokusho) Diplomacy: Japanese Foreign Relations with East/Southeast Asia and Iberian States, 15th-17th Centuries
Matsukata Fuyuko organizer
Hashimoto Yu Were the "State Letters" Authentic?: Examining the Characteristics of Envoys from the Muromachi Shogunate to the Chosŏn Dynasty in the 15th Century
Joshua Batts The Emperor, The Prince, The King, and I: Luis Sotelo and the Complicated Credibility of the Keichō Embassy.
Hasuda Takashi Diplomacy without Embassy?: Vietnam - Japan Relationship in the Seventeenth Century
Peter Shapinsky Comments
Robert Hellyer chair
総合討論

パネル報告風景1
(パネル報告風景1)



パネル報告風景2
(パネル報告風景2)



パネル報告風景3
(パネル報告風景3)



パネル報告風景4
(パネル報告風景4)



パネル報告は成功で、十分な数の聴衆を得て、活発な質疑応答がなされました。
ただ、「我々の語り」と「彼らの語り」が交わるのは本当に難しいのだ、とも感じました。「世界人類のための世界史」にとって、「日本人による日本史・東南アジア史」は絶対に必要で役に立つと信じつつ、それをどうアピールしていくのか、考えさせられる旅でした。
ワシントン大学図書館も見学しましたが、蔵書の数と質、司書の数と質(専門性の高い司書がいる)、レポート作成やプレゼンのサポート体制、長期的なヴィジョン、どれをとっても圧倒されました。

(文責:松方冬子)

Seattleは本当に良い町でした。と同時に、アメリカの格差社会の一端ものぞき見た気も致しました。
何より、今回、さまざまな人と話して、いかに日本の歴史学会が孤立しているのか、身にしみて分かりました。欧米圏の流れに絡め取られすぎないように、我々の実証主義の成果を、みずから発信していかねば、ということでもあります。

(文責:橋本雄)


2016年3月14日~18日、清水有子がスペインで史料調査を行いました。

スペイン・セビリアのインディアス総古文書館を訪れ、1580年のスペイン国王フェリペ2世の中国皇帝宛使節一件に関する文書を収集した。本件は実現しなかったとはいえ、ヨーロッパの君主がアジアの君主のために作成した最初期の国書の事例としては歴史的な意義がある。 収集し得た史料は国書の写し、王勅ほか、派遣計画に関するインディアス枢機会議、メキシコ副王庁、フィリピン総督府発信の書簡約50点となる。

(文責:清水有子)

インディアス総古文書館 外観

(インディアス総古文書館 外観)


2016年2月5日、歴史と史料の会共催で第5回朱印船科研研究会を開催しました。松方冬子が「17世紀オランダの外交とデン・ハーグ」のタイトルで報告しました。


2016年1月5日~26日、原田亜希子がヴァチカン図書館及びヴァチカン文書館における教皇庁外交に関する調査を行いました。

(調査報告)
ヴァチカン図書館、およびヴァチカン文書館にて、両施設に保存されている、日本、東(東南)アジア諸国から近世に教皇庁に送られた「国書」の調査を行いました。様々なフォンドに分散しているそれぞれの「国書」の所蔵状況を確認し、近世の教皇庁における外交文書の保存状況を再構成すると同時に、現在の所蔵番号のもとでの目録の作成を行いました。さらにこれらの「国書」に対してヴァチカンから送られた返書、外交官の活動報告書、外交官に対する通行証などを通して、近世の教皇庁における外交システムの調査も行いました。

(文責:原田亜希子)

ヴァチカン図書館・文書館 外観

(ヴァチカン図書館・文書館 外観)

越南視察記

 2015年12月23日から30日の間、当朱印船科研のメンバー6名(岡本、川口、北川、清水、蓮田、松方)はベトナムを訪問しました。

 到着翌日の12月24日には、ベトナム国家大学ハノイ校において同大学社会人文科学大学と当朱印船科研の共催による国際会議
「Early modern Vietnam Japan relationship: a regional perspective」(「近世越日関係―地域的視点―」)が開催されました。
当日のプログラムは以下の通りです。

開催の挨拶  Hoang Anh Tuan
松方冬子
第一報告 松方冬子
「Overview of Historiography about the Red-Seal Ships(Shuinsen)」
第二報告 蓮田隆志
「Merchant and Adoptive Son: A Feature of Japan-Vietnam Foreign Trade during the Early Seventeenth Century Vietnam」
第三報告 Do Thi Thuy Lan (History Dept., USSH)
「Pho Hien: New Sources and Perspectives」
第四報告 Hoang Anh Tuan (History Dept., USSH):
「Early-Modern Global Exchange, Globalization, and Global Integration: The Case of Seventeenth-Century Vietnam」
総合討論
 松方報告では朱印船貿易の研究史と当科研プロジェクトの目的が示され、蓮田報告では、朱印船時代ベトナム貿易の特徴である義子、養子(adoptive son)に関する論点が提示されました。ラン報告では、トンキンの商業中心地であったとされるフォーヒエン(現フンイェン)が取り上げられました。同地はトンキンの貿易拠点として16世紀から1650年代まで繁栄したという通説に対し、ラン氏の主張は、同地は中継港であり二次的な小規模な町としての役割しかなかったとみるほうが、欧文史料とベトナム史料を矛盾なく理解できるというものでした。最後のトゥアン報告では、ベトナムシルクの世界的流通など17世紀のグローバリゼーションにおけるベトナムの役割が強調され、最後にはアジア側から従来の欧米中心的な「グローバリゼーション」の視点そのものを相対化する必要性などが述べられました。
当日は小さな部屋に収まらないほどの30人以上の聴衆があり、質疑応答ではとくに蓮田報告に対する現地学生、研究者からの質問が活発になされ、盛況のうちに閉会となり ました。

今回の会議に参加した個人的感想としては、16~19世紀の対外状況における東南アジアの存在感は日本人研究者が考えている以上に大きいのではないかということです。同じアジア圏内にいながら、自分自身も含めてほとんど東南アジアを勉強する機会がなく、「よくわからない」がゆえに、見落としてきたものが大きいように思えてなりません。
他に印象的であったのは、当日参加した若い中国人、韓国人留学生、在留生を含めた現地学生の熱意あふれる討議でした。日本人学生と同様に彼らも英語はそれほど得意ではないというお話でしたが、積極的に英語で聞こう・語ろうという姿勢が顕著に見えました。外国人と接する機会の多いベトナムでは英語を使うメリットが容易に体験でき、英語に対するモチベーションが高いのかもしれません。

また今回の視察ではハノイのほかフォーヒエンとホイアンの古跡や博物館を訪問し、朱印船時代の見識を深めることができました。ホイアンには日本人が建設したと言われる橋のほか、江戸幕府の鎖国政策のため帰国できなかった日本人墓三基が残っています。今回はそのうち二基を見学しましたが、ふだん史料を通して想像するしかない彼らのたしかな足跡をこの目で直接確認でき、感慨深い旅となりました。
(文責:清水有子)

フンイェンにおける調査風景

(フンイェンにおける調査風景)



フンイェンからみた紅河

(フンイェンからみた紅河)


2015年12月23日~30日ベトナム調査を行いました。


2015年12月24日朱印船科研第4回研究会(ベトナム国家大学ハノイ校人文大学校の研究グループとの共催)を開催しました。


2015年10月24~25日、第3回朱印船科研研究会を開催しました。

第1部 地図研究会

 研究分担者蓮田を中心に、教科書等に掲載されている朱印船関連地図の見直しを行いました。既存の地図にあるさまざまな混乱 (旧地名・現地名、自称名・他称名、漢字表記・カタカナ表記など地名の問題や、場所比定など) についての指摘がなされ、今後の解決策についても話し合いました。発表者とタイトルは以下の通りです。

蓮田隆志「趣旨説明と中高教科書地図の概観」
北川香子「カンボジアの日本人居住地について」
川口洋史「朱印船貿易・日本町関連書籍・歴史教科書所載地図シャム部分の表記について」
清水有子「フィリピン (ルソン) の日本人居住地と日本町」
久礼克季「歴史教科書に現れるインドネシアの地名について」

第2部 『宗主権の世界史』読書会

 編者の岡本隆司氏ほか、執筆者の古結諒子氏、藤波伸嘉氏、望月直人氏、山添博史氏、にご出席いただき、読書会を開催しました。近藤和彦氏、Birgit Tremml氏にもご参加いただきました。
発表者とタイトルは以下の通り。和気藹々とした雰囲気の中、活発な議論が行われました。

太田淳 「支配の正当化、『宗主権』とそれ以外:オランダの東インド進出」
北川香子「東南アジア大陸部における一『朝貢国』カンボジア」
巽由樹子「『宗主権の世界史』読書会 話題提供 (ロシア史)」
橋本雄 「中世日本国際交流史の関心からみた本書の意義」
杉本史子「近世日本 一国史的視点では捉えられない」
松方冬子「『外交Foreign relationsの世界史』は可能か」

写真1


第3部 近藤先生を囲む会

 近藤和彦氏をお招きし、「礫岩国家」論についてご報告をいただき、松方がコメントしました。

近藤和彦「礫岩のような近世ヨーロッパの秩序問題」
松方冬子「近藤和彦報告『礫岩国家論の現在』に寄せて」


2015年8月17日  第2回朱印船科研研究会 於:東京大学史料編纂所

Adam Clulow, The Company and the Shogun, New York:Columbia University Press, 2014の読書会を行いました。Joshua Batts氏による加藤榮一『幕藩制国家の成立と対外関係』 (思文閣出版、1998年) の書評も行なわれ、事実関係だけでなく、日米の研究史や研究動向についても活発な意見交換が行われました。出席者:清水有子、松方冬子、Joshua Batts, Birgit Tremml (発表順)


2015年7月31日~8月2日  第1回朱印船科研研究会 於:東京大学史料編纂所

分担者・協力者それぞれの実証研究に基づいて、発表と討議が行われたほか、理論的な枠組みについても話し合いました。発表内容は、以下の通りです。

岡本真「「相国寺書翰屛風」とその写本」
北川香子「17~18世紀クメール語書簡について」
川口洋史「18世紀末から19世紀前半のシャムにおける「国書」について」
蓮田隆志「ベトナムの対外通交統制の仕組みをめぐって」
橋本雄「勘合・牙符・文引・その他」
彭浩「近世日清通商における信牌システム」
原田亜希子「近世教皇庁をとりまく外交官」
清水有子「豊臣秀吉とルソン総督の「国書」」
松方冬子「朱印船をめぐる外交―『国書』と通航管理―」 (発表順)


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松方 冬子(まつかた ふゆこ) 東京大学 史料編纂所 准教授 博士 (文学) Associate Professor,the University of Tokyo Ph.D.(the University of Tokyo, 2008)

主要研究業績

販売書籍

  • 国書がむすぶ外交(東京大学出版会)
  • 日蘭関係史をよみとく 上巻:つなぐ人々 下巻:運ばれる情報と物(臨川書店)
  • オランダ風説書と近世日本(東京大学出版会)
  • 別段風説書が語る19世紀 翻訳と研究(東京大学出版会)
  • オランダ風説書「鎖国」日本に語られた「世界」(中央公論新社)

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