和紙分類の考え方と分類表
和紙分類の考え方
三大物理分類
(イ)繭紙(純繊維紙)、(ロ)糊紙(米糊添加紙)、(ハ)生漉紙(柔細胞紙)
材質分類を正確に行うことによって和紙の観察・分類の基礎情報を相互に確認できる。
歴史名称分類
物理的な分類のなかに、歴史的な和紙の名称を使用した細分類をもうける。
歴史名称分類、つまり、その紙を、その紙が生産された時代の人が何と呼んでいたかを確定することは歴史学の立場からは、是非、確定したい問題である。しかし、当面のところは、三大材質分類の内部を細分類していく際の試論的な分類のレヴェルとして考えていく。
物理分類と歴史名称分類の二つの分類方式を併用していく方針をとる。
最上級の紙で、中国にも輸出された。中厳円月に「繭紙日本謂之引合」という定義がある。上製は簀目が細く、かつ紙の表面に繭のような細かい皺がある。光沢度が高く、繊維漂白による白さが顕著である。澱粉などの填料および不純物は基本的には入っていない。王家でおもに使用された上製・厚手の引合、最上級の書状用紙でいわゆる和歌懐紙と同質の上製・薄手の物、そして戦国時代の名前だけの引合が存在した。
填料として米糊を使用した紙。非繊維物質は相対的に少なく、顕微鏡で繊維にカエルの卵のように付着した澱粉を確認できる。簀目はやや白くなる。澱粉は、にじみどめ、白色度の上昇、柔らかな紙質などの効果がある。漉返の繊維が入っていることも多い。
生漉紙とは柔細胞その他の楮茎内から分離した非繊維物質を相当量含んだまま抄紙された紙をいう。簀目が太く顕著な強杉原系の紙とやや薄手でパリパリしたツヤのある美濃系の紙にわけることができる。料紙の色合いが黄色あるいは簀目が黄色・薄茶色になるのが普通であるが、美濃の白薄などは相対的に白く上製である。
雑紙の定義
縦26センチ前後、横38センチ前後以下で、小さな簀を使用した料紙。広域的な販売ルートにはのらない紙。紙質が粗末なことが多い。基本的にその地域で作った紙である場合が多く、荘園の雑文書の料紙である。生漉紙であることが多いと思われる。