王子製紙株式会社とのコラボレーションによる
復
元 紙 の 分 析
◆本科研では、東京大学大学院農学生命科学研究科(製紙科学研究室・准教授)江前敏晴氏の協力を得て、王子製紙株式会社・研究開発本部、東雲研究センターに成分の分析と光学顕微鏡による撮影を依頼し、研究を進めている。
◆「糊紙」と「生漉紙」の分析
撮影・分析を依頼した料紙は、長谷川和紙工房及び高知県紙産業技術センターの大川昭典氏の協力を得て作成した復元紙のうち、@澱粉を加えて漉かれた「糊紙」とA柔細胞を含む「生漉紙」である。
@糊紙……大川昭典氏(高知県紙産業技術センター)の技術指導の下に復元したもの.原料は楮:米粉=1:1(乾燥重量300gの楮に対して300gの米粉を加えて作製).
A生漉紙……2010年8月、長谷川和紙工房の協力により復元したもの.復元過程については、こちらを参照.
◆光学顕微鏡での撮影にあたっては、NikonE600DICを使用し、「糊紙」と「生漉紙」について、それぞれ@透過のみ、A微分干渉観察、B位相差観察の三種類の画像を撮影した。
※「微分干渉観察」とは、光源から得られる偏光を二つに分割して、分析の対象とする料紙の異なる二点を通過させた後、再び合成することにより、通常の透過では見ることのできない構造を可視化する方法.
※「位相差観察」とは、光線の位相差(異なる屈折率の物質を透過した際に生じる差)をコントラストに変換して観察することで、やはり通常の透過では見ることのできない構造を可視化する方法.
◆光学顕微鏡による「糊紙」の撮影 @透過のみ(×100倍) A微分干渉観察(×100倍) B位相差観察(×100倍) |
◆光学顕微鏡による「生漉紙」の撮影 @透過のみ(×100倍) A微分干渉観察(×100倍) B位相差観察(×100倍) |
◆これまで本科研では、柔細胞を多く含む「生漉紙」の特質として、膜状のものを観察できることを提唱してきたが、今回の撮影により「生漉紙」の膜状の構造を明瞭に確認することができた。これは、「生漉紙」について、×200倍、×400倍で「微分干渉観察」・「位相差観察」を行うことにより、さらに明確なものとなった。
○「生漉紙」の微分干渉観察(×200倍) |
○「生漉紙」の微分干渉観察(×400倍) ○「生漉紙」の位相差観察(×400倍) |
◆今後、本科研では、王子製紙株式会社との共同研究をさらに進め、柔細胞の成分分析を行う予定である。