設立の経緯
コンピュータによる画像処理の飛躍的発展を前提として、絵画・絵図史料や古写真等の各種画像史料の歴史学的な解析・研究という近年の日本史研究の課題を実現するため、本センターは、1997(平成9)年度に附属施設として設置され、2017(平成29)年度に20周年を迎えました。
古写真調査(オーストリア)
組織と目的
本センターは、本所教授の中から選出されセンターの管理運営を総括するセンター長、及びセンターの円滑な運営のため、本所教員等から構成される運営委員会が設けられています。その目的は、「日本史に関する各種画像史料及び画像史料情報を収集・整理して系統的に蓄積するとともに、電子計算機等による画像情報処理方法を生かして解析・研究を行い、その成果を学内外に公開すること」(センター規則第2条)にあります。
研究内容
長年にわたる本所の史料収集活動は、各種画像史料と画像史料情報を、模写・影写・拓本・写真撮影等の多様な手段によって蓄積してきました。そうした歴史に立って、本所の五大部門と前近代日本史国際情報センターとの有機的な連携態勢をとりながら、本センターは、以下の3
分野に関し解析・研究を行います。
第1は、肖像画・絵巻・屏風絵・絵図・古地図等を対象とする絵画史料分野です。日本史学の立場から、これらの絵画史料に表現されている歴史事象を解析・研究し、多種多様な歴史情報の把握を可能にする絵画史料の史料学を確立していくことを課題としています。現存する荘園絵図の良質な図版を提供することを目的とし、荘園絵図プロジェクトのスタッフが制作を担当する『日本荘園絵図聚影』は1998
年度から本センターの出版物となり、2020 年度には、その釈文編第3
冊目の中世編2が刊行されました。
第2は、錦絵や摺物(瓦版)、古写真等の近世後期から近代初頭にかけての画像史料分野です。これらの史料収集・整理を先行させながら、個々の画像史料から歴史情報を汲み取り、絵師・詞書作者・版元の確定や流通プロセスと需要層等の分析も行います。
第3は、古文書画像分野です。電子計算機等による画像情報処理方法の発展は、文献史料を画像史料として扱う可能性を生み出しました。古文書の形態論的研究の発展という近年の動向を踏まえ、膨大な点数の古文書をデジタル画像化して、筆跡・花押(サイン)の同定、形態分類等による様式論・機能論の新たな試みを可能にする方法論の研究と具体的な手法の開発を課題としています。また拓本史料を利用した金石文研究にも本格的に着手しています。
以上の3分野の諸課題について、本センターは、所員に対してプロジェクト研究を募集し、応募したさまざまなプロジェクト研究が、同時平行的に解析・研究を推進しているのです。
また、2003
年度からは、大学だけではなく博物館・美術館等の画像史料を研究対象とする研究者との新しい連携・協同で、効果的でかつ豊かな成果を生み出すために、共同研究員の制度を発足させ、活用しています。
なお、2007年度には、開設10周年を迎えたことを記念し、研究集会「画像史料研究の成果と課題」を開催するとともに、本センターの活動の主力である各プロジェクトグループの活動の到達点と今後の課題について詳細に記した報告書『画像史料解析センターの成果と課題』[PDF2.47MB]を作成しました。
また、2017年度には、センター設立20周年記念事業として、公開講演会「画像史料の語る日本史」を開催し、『画像史料解析センターの成果と課題
Ⅱ―設立20周年記念報告書―』[PDF5.1MB]を刊行しました。
刊行物(1997 ~ 2024年度)
- 『日本荘園絵図聚影』4(近畿三)・5上(西日本一)・5下(西日本二)・釈文編1(古代)・釈文編2(中世1)・釈文編3(中世2)・釈文編4(中世3・古代補遺)
- 『摺物総合編年目録(第2稿)』(2000年7月) ※在庫あり(郵送料360円)
- 『摺物総合編年目録(第2稿)補遺』(2019年3月) ※在庫あり(郵送料310円)
- 『風説留中画像史料一覧(稿)』(1999年3月) ※在庫あり(郵送料360円)
- 『新潟県北蒲原郡紫雲寺町大字大中島 神田家文書目録』(2005年3月) ※在庫あり(郵送料310円)
- 『東京大学教養学部美術博物館資料集2―有職装束類―』(2005年7月) ※在庫なし
- 『森川杜園『正倉院御物写』の世界』(2009年3月) ※在庫なし
- 『三澤家文書』(東京大学史料編纂所研究成果報告 2012-2、2012年11月) ※在庫なし
- 『天野家文書』(東京大学史料編纂所研究成果報告 2014-2、2015年1月) ※在庫なし
※入手ご希望の方は、郵便切手送料分をを同封の上、東京大学史料編纂所画像史料解析センターあてにご注文ください。複数冊ご希望の場合は、お問合せ下さい。 - 『描かれた倭寇 「倭寇図巻」と「抗倭図巻」』(吉川弘文館、2014年10月)
- 『高精細画像で甦る150年前の幕末・明治初期日本―ブルガー&モーザーのガラス原板写真コレクション』(洋泉社、2018年3月) ※在庫なし
- 『入来院家文書CD-ROM 版』(紀伊國屋書店、2000年2月)
- 『肖像 紙形と古写真』(2007年6月、10周年記念研究集会パンフレット)
- 「画像史料解析センター通信」1 ~ 105号 既刊号目次:〔一部Web公開〕
※1998年3月創刊。2024年度より年3回刊行。配布を希望される機関はご連絡ください。なお個人への配布は行っておりません。
刊行物送付依頼フォーム
データベース
データベース選択 - 「史料編纂所所蔵荘園絵図模本データベース」
史料編纂所が所蔵する荘園絵図模本のデータベース。画像・トレース図・釈文・解説および地図との連携あり。
- 「史料編纂所所蔵肖像画模本データベース」
史料編纂所が所蔵する肖像画模本のデータベース。画像の特徴を言葉で検索できるように工夫。
- 「肖像情報データベース」
地方史類、日本史の各種通史、博物館・美術館の図録類から肖像画の所在情報をデータベース化。
- 「歴史絵引データベース」
装束・調度などに関するデータベース。解説付きのトレース図と図書類の挿図索引。
- 「錦絵データベース」
東京大学史料編纂所・静岡県立中央図書館・横浜開港資料館所蔵の錦絵データベース
史料編纂所762点は画像閲覧が可能。静岡県立中央図書館2918点、横浜開港資料館939点は書誌情報が検索可能。静岡県立中央図書館分は「ふじのくにアーカイブ」より大半が、横浜開港資料館分は「よこはま歴史画像集」より一部が画像公開。 - 「摺物データベース」
幕末~明治維新期に刊行された摺物の所在目録・書誌データベース。
- 「古写真データベース」
史料編纂所が所蔵する古写真のデータベース。写真史の観点からも利用できるように配慮。
- 「金石文拓本史料データベース」
史料編纂所が所蔵する金石文拓本のデータベース。画像とともに銘文・参考文献があり、地図上にも表示。
- 「電子くずし字字典データベース」
『草露貫珠』および主に史料編纂所が所蔵する原本史料から切り出した文字画像のデータベース。図書室端末では採訪画像などからの切り出しも閲覧可能。「史的文字データベース連携検索システム」とも連携。 - 「木簡・くずし字解読システム(MOJIZO)」
奈良文化財研究所と東京大学史料編纂所が共同で開発した、画像から検索する〈画像引き〉文字画像データベース。奈文研の「木簡庫」と史料編纂所の「電子くずし字字典DB」に収載された文字画像データを、AIによる深層学習を通じて特徴抽出することで、検索機能を高めている。
- 「花押データベース」
『大日本史料』編纂のために作成された「花押彙纂」のデータベース。図書室端末では『花押かがみ』編纂のための「花押カード」も閲覧可能。 - デジタルギャラリー
「入来院家文書ギャラリー」、「錦絵ギャラリー」
「倭寇図巻デジタルアーカイブ」
「正保琉球国絵図デジタルアーカイブ」、「都城島津邸所蔵「琉球并諸島図」デジタルアーカイブ」
錦絵データベース
東京名勝本郷之風景 肖像画模本データベース
織田信長画像(模本) 古写真データベース
池田筑後守肖像 『日本荘園絵図聚影』
薩摩国日置北郷下地中分絵図
歴代センター長
- 黒田日出男 平成 9 年4 月~平成 9 年8 月(1997)※所長兼任
- 宮地 正人 平成 9 年9 月~平成11 年3 月(1997 ~ 1999)
- 黒田日出男 平成11 年4 月~平成13 年3 月(1999 ~ 2001)
- 黒田日出男 平成13 年4 月~平成15 年3 月(2001 ~ 2003)
- 加藤 友康 平成15 年4 月~平成17 年3 月(2003 ~ 2005)
- 加藤 友康 平成17 年4 月~平成19 年3 月(2005 ~ 2007)
- 林 譲 平成19 年4 月~平成21 年3 月(2007 ~ 2009)
- 保谷 徹 平成21 年4 月~平成22 年3 月(2009 ~ 2010)
- 久留島典子 平成22 年4 月~平成25 年3 月(2010 ~ 2013)
- 林 譲 平成25 年4 月~平成27 年3 月(2013 ~ 2015)
- 山口 英男 平成27 年4 月~平成30 年3 月(2015 ~ 2018)
- 高橋 敏子 平成30 年4 月~令和3 年3 月(2018 ~ 2021)
- 鴨川 達夫 令和3 年4 月~令和4 年3 月(2021 ~ 2022)
- 高橋慎一朗 令和4 年4 月~令和6 年3 月(2022 ~ 2024)
- 箱石 大 令和6 年4 月~(2024 ~ )