第三部

歴史学のデジタル・ミュージアム


 東京大学史料編纂所は1980年代からコンピュータを用いた研究・編纂に積極的に取り組み,文科系の研究所では最大級のネットワークシステムを持っています。
 このコーナーでは、史料編纂所がこれまでに蓄積した歴史情報データベースへ実際にアクセスしていただき、また、デジタル技術に基づいた最新の歴史学の成果を、音と映像のマルチメディアによってわかりやすく展示します。
 構成は、@ビデオ系コンテンツ、Aコンピュータ系コンテンツ、B立体系コンテンツにわかれています。例えば、史料編纂所の過去・現在・未来の姿、画像史料の復元成果、古文書の解読システム、鎌倉・奈良の大仏のヴァーチャル展示、史料編纂所のほこるデータベースへのアクセスなど、来館される方々に新しい歴史学を体験していただけます。
 このコーナーは、日本電気(NEC)の特別協力と、東京大学大学院情報学環(坂村健・池内克史・馬場章各研究室)の協力を得て実現しました。




主な展示内容

大山寺 騎射














 
  甦るガラス乾板


かつて史料編纂所が撮影したガラス乾板(白黒写真)の中には、すでに原本が焼失してしまった貴重な史料があります。しかも、それらのガラス乾板は長い年月の間に破砕してしまいました。この番組では、「大山寺縁起絵巻」(1398年成立、1928年焼失、旧国宝)の一場面を素材に、破砕したガラス乾板を最新の情報科学の理論とデジタル技術を使って接合・着色し、さらに着色したイメージをもとに3DCG(三次元コンピュータグラフィックス)で再現します。IT技術によって、新たな絵巻の世界が展開します。


絵巻復元

絵巻復元
 
「大山寺縁起絵巻」は、ガラス乾板のほかにも精密な模写が残されています。しかし、模写の場面や詞書も長い年月のうちに順番が入れ替わってしまいました。史料学に基づいて綿密な考証を行い、現在まで残っている模写の各場面の前後関係を正しく入れ替えた成果を番組としてお見せします。この番組は英語版も上映します。













古文書のデジタル解読システム

古文書はなかなか読みにくいものです。そこで、歴史的に有名な史料を素材として、デジタル解読システムをご覧いただきます。
折本一覧 

史料編纂所が所蔵する『歴代亀鑑』(島津家文書、国重要文化財)は貴重な史料を貼り込んだ折本です。しかし、折本を一度に展示することはできません。そこで、コンピュータの画面上で、解読文といっしょにめくって読むことができるシステムをつくりました。
紙背文書の分離 
古文書には紙の表だけでなく裏にも文章などが書かれたものがあります。墨がうつってしまって大変読みにくいのですが、史料編纂所の伝統的な影写の技術と最新の情報処理技術によって、裏表の墨が重なってしまった文章を分離するシステムをつくりました。


国絵図データベース

古地図のように大きな史料の現物を取り扱うのは大変です。地図をデジタル化してコンピュータで取り扱う研究支援ツールを開発しました。これを来館者の方々にも分かりやすいように、画面を作りかえて展示します。古地図の自在な拡大・縮小や古地図と現代地図の比較、さらに城下町や都府県庁所在地などの検索ができます。



東京大学史料編纂所の歴史情報データベースと21世紀型編纂システム

史料編纂所がこれまで蓄積してきたデータベースにアクセスしていただきます。事件や人物を調べたければ、年表風に(史料タイトル)、あるいは全文テキストで、さらにはヴィジュアルデータで検索することができます。 また、史料編纂所の100年以上にわたる史料集編纂のノウハウをコンピュータに組み込んだ、新しい編纂システムをご紹介します。
     


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