第一部 史料・美術展示  (その1)

公家日記の世界


  今回の展示には、台記、愚昧記、後愚昧記、実隆公記(以上、重要文化財)をはじめ、史料編纂所の公家日記の数々が展示されます。三条西実隆は室町後期最高の文化人として知られますが、実隆晩年の肖像や書跡に加え、壮年期の実隆を描いた土佐光信の紙形(スケッチ)が展示されます。この紙形は別の書物にはさみこまれていたものですが、自筆日記と照らしてみると興味深い記事が見つかります。実隆は北野天神縁起絵の制作で相談にきた光信に自分の肖像を描かせますが、十分に似ていない、興ざめだと感想を記していたのです。
 展示には、国宝の御堂関白記(陽明文庫)や白氏詩巻(東京国立博物館)も出陳され、紫式部日記絵巻(個人)や天子摂関御影(宮内庁三の丸尚蔵館)など、華麗な絵巻物が平安宮廷の世界を彩ります。



  主な展示品

拾芥抄
  拾芥抄(重要文化財)  南北朝時代・14世紀

  

 拾芥抄は洞院公賢が著したとされる百科全書的な書物。
 これは「八省指図」の部分で、平安宮研究の基本史料です。
 史料本は諸本のうちで書写された時期が最も古いもの。










実隆紙形
 三条西実隆肖像紙形実隆公記
 室町時代・1501年  
                                           実隆公記(重要文化財)
                                          文亀元(1501)年10月4日条


   紙形(画稿)の左隅に「辛酉 十 四」とあり、
  これが「辛酉」にあたる文亀元(1501)年10月4日の記事とピタリと符合します。
  この日、当代一の絵師土佐光信(「土左刑部少輔」)が訪れ、
  北野天神縁起絵の制作について相談がありました。
  実隆は光信に肖像を描かせますが、気に入らず、
  別の書物にはさみこんでしまいました。
  そして、「十分に似ず、比興也」(十分に似ておらず、興ざめである)と
  感想を日記に記していたのです。
  この二つが再び出会うことになりました。












展示予定品リスト(東京大学史料編纂所の分のみ)   ◎は重要文化財

◎    拾芥抄/南北朝時代・14世紀
       尾張国郡司百姓等解文(988年)/鎌倉時代・14世紀
◎    台記 仁平三(1153)年冬巻 /鎌倉時代・13世紀  
       職事藤原実行下宣旨書状(藤原実行筆) /平安時代・12世紀  
◎    愚昧記(藤原実房筆) 嘉応元(1169)年春巻/平安時代・12世紀
       光厳天皇自筆書状(中院一品記)/南北朝時代・14世紀   
◎    二条良基自筆書状(後愚昧記紙背) /南北朝時代・14世紀  
        徳大寺公清公記 貞和六(1350)年春巻/南北朝時代・14世紀   
        薩戒記(中山定親筆) 嘉吉三(1443)年六月巻/ 室町時代・15世紀  
       三条西実隆像紙形(土佐光信筆)/室町時代・16世紀
◎    実隆公記(三条西実隆筆) 文亀元(1501)年十月記/室町時代・16世紀
◎    実隆公記(三条西実隆筆) 天文三(1534)年春四月記/室町時代・16世紀
◎    実隆公記(三条西実隆筆) 延徳二(1490)年秋記/室町時代・15世紀
◎    実隆公記(三条西実隆筆) 永正十七(1520)年春夏七月記/室町時代・16世紀
◎    実隆公記(三条西実隆筆) 文明十二(1480)年八月九月記/室町時代・15世紀
        三条西実隆自筆仮名消息(北白川宮旧蔵手鑑零存)/室町時代・16世紀   
◎    宗祇自筆書状(実隆公記紙背)/室町時代・15世紀  


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