東京大学史料編纂所 Historiographical Institute The University of Tokyo
Director Yosuke Onoe
Director Yosuke Onoe

東京大学史料編纂所は、日本史に関する史料の研究と、史料集の編纂・出版を行う研究所です。国内外に残る古代から明治維新期までの各種史料を収集・蓄積して研究し、その内容を『大日本史料』『大日本古文書』『大日本古記録』『大日本近世史料』『大日本維新史料』『日本関係海外史料』『花押かがみ』『荘園絵図聚影』などの基幹史料集や、多様な各種データベースにより学界および社会にひろく公開し、貢献することを使命としてきました。

研究所の歴史は江戸時代の和学講談所まで遡ります。これを引き継いで、1869(明治2)年に明治政府の近代修史事業が開始されます。1888(明治 21)年には事業が帝国大学に移管され、史料の収集・研究と史料集の編纂という現在につながる方針が採用されました。1885(明治 18)年から本格的な史料収集が始まり、1901(明治 34)年にはそれにもとづいた史料集の出版が開始され、これまでに刊行したものは 1,200 冊を越えております。

史料の研究と史料集編纂の前提として、国内外に数多く伝来する史料の調査と収集を百数十年にわたり継続しております。明治期以来、影写・謄写等による筆写や写真撮影など、史料の特性にあわせて各時代における最適の手段を採用してきました。近年にはデジタルカメラで撮影した高精細史料画像を組織的に蓄積して公開する仕組みを整えています。また、国宝『島津家文書』(15,133 通)や重要文化財 20 点をはじめとする 20 万点以上の貴重な原本史料を所蔵しています。これらを永く後世に伝えるために修理を施しつつ、紙質など原本そのものの情報を分析し、保全と研究が一体となった事業を進めています。

このような伝統を守る一方、研究対象の拡大や発信方法の革新にも積極的に取り組んでおります。早く 1954 年に日本学士院から委嘱を受けて在外日本関係史料の調査・収集を進めるとともに、海外への日本史情報の発信など日本史の国際化にも努め、中国・韓国をはじめとする諸外国の史料所蔵機関・編纂機関との連携を深めています。1997 年には画像史料解析センターを開設して絵画史料や古写真の研究を推進し、2006 年には前近代日本史情報国際センターを設立して新たに歴史情報学に取り組み始めました。2009 年には「日本史史料の研究資源化に関する研究拠点」に認定され、各地の研究者・博物館・自治体等と協力してこれまでに 250 件近くの共同研究を推進し、その成果を共同利用に供しています。2019 年には日本学術振興会の人文学・社会科学データインフラストラクチャー構築推進事業の唯一の人文学拠点として採択され、2023 年からはその成果を踏まえた同強化事業の中核機関として人文学全体のデータ共有・利活用を促進する基盤の構築を進めています。

2020 年からの新型コロナウイルス感染症は、史料収集が不可能になるなど、研究活動に大きな制約をもたらしました。その一方、史料編纂所データベースへのアクセス件数は大幅に増加し、提供する史料情報への一般社会からの要請の大きさを実感しました。今後も学界・社会に開かれた日本史史料研究の拠点組織としての期待に応えられるよう、伝統を踏まえつつ最新の技術を導入しながら、歴史研究・史料研究の基盤を担う研究所として発展することを目指します。みなさまの一層のご理解とご支援をお願い申し上げます。