通航一覧琉球国部テキスト

重点領域研究「沖縄の歴史情報研究」

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皇国居輿地之正、寒暑中適、民物富庶、治隆於上、俗美於下、撃壌鼓腹、遍布海内、故異邦之来、通信貿商者不鮮矣、寛永中有以邪教撹邦俗者、於是、朝廷定制、通信則朝鮮琉球、貿商則支那和蘭而已、其他一切却之、蓋不啻其邪教之禁、亦以不待異邦諸品之給也、方今万邦林立、皆以貿易為業、商帆賈舶、陸続来往於洋中、故近者復来、懇請通信貿商者往々有焉、而士大夫之好奇者、徒於異邦之廃興盛衰与夫俗尚器械、則汲々求之不措、而我之所以応接於彼者、則未必留意講究、夫如是而夷舶入津、急遽応接之際、求其体例、而不得卒然処之、苟有一錯失、則其将辱国体者、不為小矣、是余之所以予慮也、因令僚属数輩、就旧篇古記、足以徴者〓輯、其係夷舶応接之事、〓夕拮据、裘葛三換、以今茲告卒業、釐為若干巻、命曰通航一覧、於是乎、海口有事、急遽応接之際、輙就此編、以求其体例、一覧瞭然、靡有遺漏、則何唯言語文辞之不失次叙也、実有不辱国体者存焉、蓋是編、肇於永禄、終於文政、爾後係此事者、将俟他日而続集之云、
嘉永六年竜集癸丑小春月、大学頭林〓識、(印)(印)
              門人関研書

通航一覧
   凡例
一異国来往の事を略記せるもの、異国来往記、外国通信事略の類、世に行はる、今この編は、其事の詳略漏さす、記事神祖の御代、永禄九年御分国三河国片浜浦に、安南国の船漂着の事よりおこして、文恭院殿御代、文政八年異船打払ひの新令を出されしに止まる、これ彼船処置の一変せしによりてなり、この令、実は附録海防の部に出たれとも、もと本編に通して、其始終の大意を包括せしものなり、自後の事は他日の再輯に譲る、但し当家に関らさる事、及ひ各国の方隅風俗等は、正文にこれを省き、各部の首にこれを略記す、
一外国の中、唐山、朝鮮、琉球の如きは、其風土人情我邦と稍相似たり、南蛮西洋等の諸国にいたりては、これに反し、たゝ利と詭とを専にす、甚しきは事を通商に託して、其国の釁を覗ひ、あるひは斬伐して奪ひし事、諸書に歴々たり、故に寛永中厳にこれを排斥せらる、また我邦の人、異国渡海その来ること尚し、しかれとも蠢愚の商夫たゝ利を求めて、往々彼邪教に陥るものあり、よて其頃またこれをも禁せらる、然る時は、異国の来往其関係する所、実に容易ならす、是此編の在ところなり、
一体例諸国の序次は、五大洲にかゝはらす、また大小によらす、もと我邦来往の由を見るへきためなれは、其来往の年代をもて先後す、然れとも、琉球は我附庸、朝鮮は隣好の与国なれは、諸国のはしめにこれを位置し、長崎港異国通商総括の部、及ひ異国渡海総括の部は、彼二国の外、諸蕃来往の総括たれは、其次となし、また南蛮と称する諸州に至りては、勢ひ分割しかたきをもて、各一列とするを異例とす、但し通信通商の国にあらさるも、本邦の人漂着せしか、あるひは本邦に漂着せし異船の類は、みな其国の部をたてゝもらすことなし、
一漂着船等の中、言語文字相通せす、終に何国の船なるもしれさるものあり、此等はたゝ異国の部と題して、各国の末に掲く、
一寛永中南蛮船の事によりて、沿海の防禦を命せらる、元禄の頃異船の渡来稀なるをもて、しはらく廃せられしものありしか、寛政已来再その事を厳にせらる、よて附するに海防の事を以す、かつ砲〓は、もと舶来の蛮物にして戦陣の神器、海岸防禦の要具、これより先なるはなく、船舶もまた闕へからさるものなれは、共に附録す、
一本編は各国、附録は事をもつて門部を分つ、一部のうち、また分類して小目をたて、小目に係りし事は、其事により其目の下に、古今の来歴を分注して、概覧に備ふるあり、其小目といへるは、本編は入津漂着、あるひは拝礼献上、附録は御備場所見立、又は船方調練等の如きこれなり、但し異国日記等に載る所、入津のうち拝礼の事を連記し、あるひは御書の因に拝礼献上等の事を記せし類、分条しかたきものあり、看る人察すへし、
一毎条考証の書を概修して、本文を略記し、考証の書は一字を低く列載して便覧とす、且禁裡及ひ将軍家の尊称は、すへて擡頭す、また本文及ひ按注は、禁裡将軍家の御事のみ御謚号を記し、其他はたゝ引書のまゝを録して、此例に循はす、
一其禄万石に満る輩は、本文及ひ按注に其実名を記す、万石に満さるは、叙爵の人といへともこれを略す、
一考証の書は、仮令野人の手記に出るものといへとも、当時の形勢を見るへきため、更に修飾せす、たゝ孟浪杜撰の書は、これを抹去し、猥雑あるひは冗長に過たるは、截略して其要を摘採す、
一一条のうち、同年の事考証一書にして両事両出せしは、はしめに年号支干を記し、余は同年と録す、其書異なるに至りては、毎書また年号を記して支干を略す、
一一事の記に、大同小異かつ精粗あるは、其書の古きを存し、新しきを併せてその異同を分注す、然れとも、其事によりてまた両存せしもあり、
一御書付の類はさらなり、外国の呈書、及ひ御返簡のことき、其擡頭闕字等、みな原書の本体を存す、伝写その真を失へるものは、また其まゝを記して、敢て私作を加へす、自余の書は闕格に及はす、
一采用の書、原本誤字ありて、類本の校訂すへきなく、文理解しかたきものは、本ノマヽと旁注し、脱行蠹食等は□□□を加へて其闕を証す、また国字にてしるせし異国地名は、其旁に=を施し、異人の名は−を附し、漢字にて訳せしものは旁訓す、
一事体の詳細ならむかため、其図をあらはすものあり、異国渡海の船、及ひ渡来の異国船、また其人物、あるひは朝鮮人曲馬、蛮国器物の類是なり、
一この編諸記録を渉猟網羅すといへとも、引用の書多くは私記随筆の類にして、殊に近代の事にいたりては、その材料乏しきにより、首尾全備せさるも少からす、遺漏謬誤もまたまぬかれかたし、他日多くの典籍を得て、一たひ補正のことあらは、もしくは海外処置の一助とならんか、
         編人名氏
             宮崎次郎太夫成身
             松平庄九郎忠得
             戸田寛十郎氏功
             志賀元三郎篤
             海老原武治利済
             高島俊七郎安詳
             山上八十郎正直
             内海源五郎範儀
             水野又一郎勝永
             島田音次郎節信
             田上作左衛門時明
             神田金太郎徳純

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