ダイナマイトが150トン!

―ドクターKの何でも論評―


1 代々木オリンピックプール

このページでは、もともと雑多な本を取り上げて論評する予定でしたが、それ以外で書きたいことができてしまったので、急遽タイトルを変更しました。
事の起こりは数日前、代々木のオリンピックプールに泳ぎに行った時。夏休みの最中だというのに、入口には「サブプール公開中」とあり、利用者が減少傾向のため今年から当分はメインプール公開を停止するとのこと。
この時期、人出が集中してしまって泳ぐこともままならず、「入浴」に近い状態のプールが多い中、ここは室内プールであるためか、ハイシーズンでも十分に「水泳」を堪能できる上、日光浴用の中庭もたっぷり取ってある穴場ですが、その割に入場料は格安(さすがにだんだん上がってきて、今年は大人\550ですが)。私も、泳ぐなら必ずここと決めているところです(なかなか暇が取れないので、年に何回も何回も行くわけではありませんが)。
自分が行く時にあまり混むようになると困るので、「オリンピックプールはいいよ」と人に教えるのは控えてきたのですが、利用者が少なすぎて、あのメインプールが使えなくなるのはあまりにも残念です。東京近辺で、本当に泳ぎを楽しみたい方は、ぜひ一度行ってみて下さい。利用者が増えれば、来年にはまたメインプールが公開されるようになるかもしれません。(JR原宿・地下鉄明治神宮前下車。渋谷からも徒歩圏内)
オリンピックプール運営側の方も、ぜひメインプール公開再開をご一考下さい……というようなことを訴えたくて、ページタイトルも変えてしまったわけです。


2 トム・クランシー

最近の新聞コラムで、トム・クランシーの新作がアメリカで(例によって)ベストセラーになっていることに触れていました。彼の小説の邦訳は(多分)私も全部読んで、『愛国者のゲーム』はなかなか面白いと思いましたが、その後はだんだん読むのが辛くなってきています。問題点を一言で言えば、とにかく長すぎる!どの作品も半分の長さだったら、世紀の傑作となるのではないでしょうか。昔、NHKで「ダイナスティ」というアメリカの人気ドラマを放送していましたが、あれも初めはなかなか面白かったものの、ただひたすらにだらだらと長くて、途中で飽きて見なくなってしましました。アメリカ人はテレビでも小説でも、とにかくだらだら長い作品が好みなのでしょうか。
クランシーの作品が売れているというのは、もしかしたらそこに滲み出している極めて保守的な考え方が、現在のアメリカ人の感覚にマッチしているということなのかもしれません。銃の保有を肯定するくらいはまだ彼の国の国内問題だからよいとしても(本当はよくはないが)、アメリカの正義を素朴に信じ、これと対立するものを単純に「悪」と規定しているところなどは、ちょっと怖い感じがします。もう少し、非キリスト教世界の慣習や価値観に対する理解を深め、またアメリカ外交のダブル・スタンダードに気付いてくれるといいと思いますが、しかしそうすると本が売れなくなるのかも……。
私の中ではクランシーよりフレデリック・フォーサイスの方がはるかに評価が高いですが(もっとも『イコン』はひどかったけど)、ジャック・ライアンの人生には興味があるので、邦訳されたらまた買ってしまうんだろうな。


3 『月は無慈悲な夜の女王』(ハヤカワ文庫)

ロバート・ハインラインの佳作。月の独立運動を描いたSFで、話は面白いのですが、とにかく誤植が多い。初めの内は数ページに1ヶ所ずつ目に付き、「誤植が多い本だな」と思っていたのですが、最終章くらいにはほとんど見開きごとに間違いがあるように感じられました。読んだのはもう10年くらい前のことになりますが、印象はいまだに強烈です。私も出版の仕事をしているので、誤植を撲滅するのが容易でないことはわかりますが、何度も刷りを重ねて、訂正する機会もあったはずなのにこれではあまりにひどいのではないでしょうか?訳者の責任か、編集者に問題があるのかわかりませんが、作品への愛情が足りないように思われます。


4 空飛ぶモンティ・パイソン

金曜深夜のお楽しみ。なんとNHKで、懐かしのモンティ・パイソンが再放送されているのです。これは必見!
単なるナンセンス・ギャグと言ってしまえばそれまでですが、16トンのおもりが落ちてくるなどのネタは、日本のマンガ・イラストや小説・雑文にしばしば引用されており(ストレートな例としては五十嵐浩一『ペリカンロード』。北条司『シティ・ハンター』の大トンカチもそのバリエーションか)、ある世代のクリエイターに極めて影響力の強いシリーズだったと言えるでしょう。のちにこのグループが映画を作った時には、たまたま撮影中にイギリスを訪れた関根勤が飛び入り出演をして、怪しげな奴隷監督を好演しています。
もう一つ、この番組のすごい所は、イギリス国営のBBCが制作していることです。「フリーメイソンの挨拶」など、ひどい戯画化をされた人から猛反発を食らいそうで、よく放送できたものです。日本のNHKでは、1970年代当時はもちろん、現在でもこのレベルのものはなかなか作れないでしょう。
個人的には「まさかの時の宗教裁判」や「アリの会話」などの放映が楽しみです。また、「デニス・ムーア」を見ると、ブルース・ウィリスの奥さん出演の真面目なラブストーリーを見た時に、「♪ Denis Moore, Denis Moore, riding through the lands」などと頭の中で谺して、まともに見られなくなるのは請け合い。ぜひご覧ください。
唯一、残念なのは、字幕スーパーで放送していることです。昔、民放で放送された時は、広川太一郎・納谷悟朗など、錚々たるメンバーが吹き替えをして、原版を超える面白さを演出していました。NHKには、字幕スーパーで一通り放送した後、すぐにでも吹き替え版を放映してほしいものです。


5 FUJIYAMA

とは何かというと、富士急ハイランドのジェットコースターです。最近あちこちで宣伝ポスターを見かけますが、これが何とあの! つのだじろう氏の恐怖・心霊系イラストを使っているのですね(「恐怖新聞」「うしろの百太郎」などを思い出して下さい)。将棋系(「5五の龍」など)ではなかったものの、私は十分にウケてしまいました。しかし、あのポスターを見て「ゴールデンウィークは富士急ハイランドに行こう」と考える人が果たしているのでしょうか?



September 1998, April 1999; nakajima@hi.u-tokyo.ac.jp