2001年11月10日(土)

黒田日出男「歴史史料としての肖像画


 現在、肖像画研究は活況を呈している。日本美術史では、宮島新一氏の『肖像画』・『肖像画の視線』(いずれも吉川弘文館)や米倉迪夫氏の『源頼朝像 沈黙の肖像画』(平凡社)を先頭にして、肖像画論は新たな段階に入っている。他方、日本史研究においても、〈肖像画に歴史を読む〉試みは活発である。例えば黒田編『肖像画を読む』(角川書店)や藤本正行氏の『鎧をまとう人びと』(吉川弘文館)などが刊行され、歴史史料としての肖像画の分析・読解の試みが推進されてきている。それらの動向を概括的に紹介することが、第一の狙いとなります。
 肖像画は、古代から近代にいたるまで作られ続けてきた。その数は数十万にもなるであろう。そもそも肖像画にはどのようなものがあるのか、それらの肖像画を歴史史料としてどのように分析・読解すればよいのか、そういったことを考えてみること、これが第二の狙いです。
 この二つの目標をうまく果たすために、わたしとしては、幾つかの肖像画を具体的に分析・読解してみたいと思っています。




『織田信長画像』(本所所蔵模本)

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