2002年1月12日(土)

近藤成一「史料にみる蒙古襲来


歴史を生きた人々の肉声を聞き取るということは歴史を研究する醍醐味ですが、時代がさかのぼればさかのぼるほどむずかしいことでもあります。史料が私たちの手元に残っているのは、残るだけの理由があってのことですから、過去の人々の肉声を自由に取り出せるというものではないからです。しかし偶然に過去の人々の肉声を聞いたような気がすることは確かにあります。研究として大切なのは、その肉声を伝えているかのような史料がどのようにして作られ、どのようにして伝来してきたかという文脈を明らかにすることです。そのことによって私たちは偶然に聞いた過去の人の声がどのような歴史を語っているかを総体として認識することができるからです。この講義では蒙古襲来に関する様々な史料をとりあげながら、そこから聞こえてくる人々の肉声を手がかりに、その背後にある歴史事象を認識する方法を考えます。




『延時文書』文永九年四月九日平忠俊譲状
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