2002年1月12日(土)

榎原雅治「古文書と古記録―紙背文書の世界―


貴族の日記を始めとする古記録は、中世史の骨格を組み立てていく上で重要な史料であるが、自筆の原本が完全な形態で残っているものはほとんどない。剥離してばらばらになっていたり、虫食いや焼焦げなどの損傷を受けていたり、後世の写本しか残っていなかったりする場合も多い。そうした不完全な形態となった史料から、どのような作業をとおして、歴史研究に利用できるテキストをつくっていくのか。私たちの職場で日ごろ行っている、古記録史料の復元的研究の一端を紹介したい。また、古記録は、文書の紙背を利用して書かれている場合が多い。紙背文書からうかがわれる、公的な文書には現れない中世貴族たちの日常生活の断面も紹介してみたい。題材には室町期の古記録をとりあげる。




『実隆公記』延徳三年六月二六日条紙背文書

[戻る]