慶応元年(一八六五)から翌年にかけての遣仏使節(英国も訪問)に係わる公 用書類を事後的に編冊したもの(現存の状態は明治期外務省の手による整頓を 経て綴じ直されたもので、虫損が甚だしい)。理事官の名義でもってこの使節 一行を統率したのは文久元年の使節団に加わり渡欧経験をもつ外国奉行柴田日 向守剛中たけなか(一八二三~七七、当時四二歳)。その外通弁福地源一郎(一 八四一~一九〇六)等、外国方支配向役人らの総勢十名からなる小規模な使節 団であった。 その主目的としては、第二帝政期のフランスの支援の下で進行していた横須 賀製鉄所(後の造船所)創建計画にあたって、モデルとされたトゥーロン船廠 の見分、必要な機械類の購入、専門の技師や熟練職工の雇入、及び陸軍練兵伝 習の打診が挙げられる。 当史料は「出発前之件」「航行中之件」「帰府後之件」の3部からなり、中 でも外国奉行との郵船を介した往復公用書状(御用状)や滞仏中の外交書類を その中核とし、経費諸勘定の詳細も判明する二冊目は、「続通信全覧」の当該 類輯部分が焼失しているだけに、貴重な内容をもつといえよう。
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