『欧米行中諸請取書類』(外二七〇)は、ほとんどが遣欧使節の領収書であ るが、なかに数点混入した書類がある。その内、一八六一年の招聘米国鉱山技 師の書類は領収書なので同じくこの束にまとめられたことは理解できるのであ るが、ここに紹介するロシア領事書翰は、その他の関連文書と併せて、なぜこ こに一括されなければならないのか、不明である。 この書翰に対する箱館奉行杉浦兵庫頭誠(一八二八~一九〇〇)の上申書 (同じく同封されている)によれば「披封仕候所和文添有之候」とあるので、 この書翰は原文であるロシア語書翰と共にその封筒の中に入っていたことが判 る(現状もそうなっている)。 外務省での旧幕府外交文書編綴方式では、ロシア語書翰は『露国来翰』に綴 じられ、和文書翰は写が作られ、『露国往復書翰』などに綴じ込まれる。当然 一八六六年『露国来翰』(外一〇一七)にはロシア語原文はないが、慶応二年 『露白伊国往復書翰』(外三七二)には和文書翰写二通が収められている。つ まり、和文は写がつくられたことにより、引継書類全体の分類のなかに収ま り、『続通信全覧』にも集録されたのであるが、ロシア語書翰は何からかの理 由ではぐれてしまったので、欧文書類ということで一括されたのであろう。そ の際封筒ごと一括されたので、同封和文や関連する上申書などもそのまま残る こととなったのであろう。 内容は、遣露使節派遣に際して、交渉のための全権委任を求めたもの。釈文 に代えて、『続通信全覧』所収の写を示す
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