18.東寺百合文書の料紙調査

二〇一九年一〇月七・八日および二〇二〇年二月一七~二〇日の二回、京
都府立京都学・歴彩館に出張し、同館所蔵「東寺百合文書」原本の料紙調査
を実施した。この調査は、二〇一八年度より始まった画像史料解析センター
プロジェクト「東寺百合文書の料紙分析プロジェクト」の活動によるもの
で、共同研究員の富田正弘(富山大学名誉教授)、天野真志(国立歴史民俗
博物館)が同行した。
このプロジェクトでは、「東寺百合文書」の中から、これまでの料紙研究
の素材となってきた文書を選択し、調書の作成と顕微鏡カメラによる撮影を
行ない、基礎的・客観的なデータ収集につとめた。調書の内容は、料紙の
縦・横・厚さの数値、重量、紙漉き時の簀目本数・糸目幅、簀目・紗目・板
目・刷毛目の見える側面と文字記載側面との関係(表裏の判定)、色合い、
繊維束の有無、漉きむらの有無などの目視観察による記録と、繊維の長さ・
太さ、填料の有無・量、墨色素の混入、非繊維物質の有無などの顕微鏡によ
る観察の記録である。
今回調査した文書は、ホ函・マ函・こ函・み函の御教書・奉書、綸旨・院
宣などが中心であったが、特に中世文書の一般的な料紙であった杉原紙との
比較によって檀紙の特徴をつかむことを意図した。調査成果については、別
途用意する予定であるが、また編纂所の「史料情報統合管理システム」構想
の中でデータベース化していくことになる。
(高島晶彦・高橋敏子)

『東京大学史料編纂所報』第55号