39.東大寺図書館所蔵薬師院史料の調査

二〇一四年四月一四日、奈良市東大寺図書館において、薬師院文書(未整理分)の調査を行った。すでに同史料については、二〇〇二~八年に大方の調査を完了している。概要は『所報』四一号・四三号の採訪報告において報告済みである。今回は、前回の調査で保留とした第九括模写類を中心に、その他若干の再確認作業を行った。第九括の全六六点はいずれも江戸時代のもの。内訳は、正倉院宝物が三八点、装束模様など装束関連一八点、道澄寺銅鐘銘八点(平安遺文金石文編四六号)、仏画二点である。正倉院宝物模写の多くは、流布する元禄図(元禄六年開封時に描かれた諸本)からの模写と見られるが、驎鹿草木夾纈屏風・鳥木石夾纈屏風・臈纈屏風羊木屏風・鳥毛帖成文書屏風・木画紫檀碁局・銀平脱合子・紺(紅)牙撥鏤碁子・牙横笛など一〇点につき、元禄図には見られない図案もあり、それらの親本が今後の検討課題となる。

(稲田奈津子・西田友広・遠藤基郎)

『東京大学史料編纂所報』第50号