69.オーストリア共和国所在日本関係古写真等の調査・撮影

二〇一二年一〇月一三日から二一日にかけて、オーストリア共和国ウィー
ン市・同バートアウスゼー市に出張した。参加者は、保谷徹・箱石大・谷昭
佳・高山さやか・田中里実助教(日本大学)・鳥海早喜氏(同院生)の六名
である(保谷は二日遅れで出発)。また現地では、共同研究員ペータ・パン
ツァー名誉教授(ボン大学)・宮田奈々氏(同)・アルフレッド・モーザー氏
に調査協力をあおいだ。古写真研究プロジェクト(代表:保谷)と三菱財団
人文科学研究助成「幕末維新期の在墺日本関係古写真・ガラスネガの総合的
研究」(代表:保谷)による合同調査である。
1、カマーホフ博物館(バートアウスゼー市)
カマーホフ博物館が所蔵する日本関係の湿板写真ガラスネガ原板を再度す
べて出していただき、調査・撮影した。今回の調査では最新の高精細デジタ
ルカメラ(八〇〇〇万画素)を使用し、透過光による分割撮影にも取り組ん
だ。撮影データは、計一八四点・一二九九カットであった。撮影データの取
り扱いなどについて市側と協議したほか、市長・文化担当市議会議員が同席
した昼食会に参加した。
バートアウスゼー市からウィーンへの途上、リンツ郊外のサルム=ライ
ファーシャフト伯爵邸(シュタイレッグ宮殿)に立ち寄り、伯爵の案内で収
蔵品展示を見学する機会を得た。青木周蔵の御子孫である。
2、オーストリア国立図書館(ウィーン市)
一八六九年に来日した写真家ヴィルヘルム・ブルガーの日本関係古写真コ
レクションを閲覧・調査した(谷・高山・田中・鳥海)。
3、オーストリア国立文書館(同)
日本派遣使節団の信任状などの閲覧調査(箱石・パンツァー)、一八六〇
年代の米国駐在公使報告の閲覧調査(保谷)をおこなった。
4、アルフレッド・モーザー氏所蔵コレクション(同)
写真家ミヒャエル・モーザーの御子孫が所蔵するアルバム・コレクションを
調査・撮影した。
 調査終了後、日本大使館にて岩谷滋雄大使夫妻らと夕食会に招かれ、モー
ザーコレクションの調査状況などについて紹介した。

(保谷 徹・箱石 大・谷 昭佳・高山さやか)

『東京大学史料編纂所報』第48号