50.大和文華館所蔵史料の調査

二〇一三年二月一四日、奈良市の大和文華館に赴き、勧修寺聖教文書調査団
の上島享氏・佐藤愛弓氏とともに、所蔵史料数点の調査を行った。同館学芸
員の古川攝一氏・植松瑞希氏には種々お世話になった。篤く御礼申し上げる。
一部のごく簡単な報告を記しておく。
〇両部別録
※小西瑛子「元興寺僧常暁の入唐求法」(『元興寺仏教民俗資料研究所年報』
一九六九年)に指摘されているものの、近年展示されるまで所在があまり知
られていなかった。重要文化財の『常暁将来目録』と一具にされているが、
本所影写本[3014-43](東京市麻布区・岡本貞烋氏所蔵、一九一四年作成)
においても、両者が一緒の所蔵とされて影写されている。ともに巻首には見
返しと本紙にまたがるかたちで朱方印「勧修寺/大経蔵」が押されている
(影写本では写さず)。また、巻末には賢賀の修補奥書はない。『大日本史料』
第一編之四(一九二六年)延喜十一年雑載・仏寺(三五一~六七)に全文が
収められ、書名を「〔両部別録〕〈水尾/〇禅林寺本〉」としているが、旧表
紙の外題に「両部別録一巻〈水尾〉 禅林寺本」とあるのを採っている。
〇地蔵印仏
※『大和文華館所蔵品図版目録』二・絵画・書蹟〔日本篇〕(一九九〇年)

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。藤原「「中御門逆修」地蔵菩薩像の像内納入印仏」(町田市立国際版画
美術館編『救いのほとけ』二〇一〇年)参照。紙背は十月廿二日付け加賀公
御房宛の某(署名・花押あり)書状。紙背への書き込みには、上掲書解説に
触れる「合三百六十六体 南無、南無阿弥陀仏 良快」の前にも、「百二十
たい/六十たい□□(つゝ?)」とある。現在は巻子装で裏打ちあり。

(藤原重雄)

『東京大学史料編纂所報』第48号