68.オーストリア共和国・ドイツ連邦共和国所在日本関係古写真の調査

二〇一〇年十月三日から九日にかけて、オーストリア共和国・ドイツ連邦
共和国に出張した。参加者は、保谷徹(古写真科研)、箱石大(古写真科研)、
谷昭佳(古写真科研)、田中里実(日本大学・古写真研究プロジェクト研究
協力者)である。また現地では、古写真科研研究協力者であるペーター・パ
ンツァー(ボン大学名誉教授)、宮田奈々(ボン大学)に調査協力をあおいだ。
古写真科研と画像史料解析センター古写真プロジェクトによる、合同調査で
ある。
1、オーストリア国立図書館
オーストリア・ハンガリー帝国東アジア遠征隊随行写真家であった、
Wilhelm Burger の日本関係古写真コレクションを閲覧し、主に技法調査を
行った。その結果、コレクションには上野彦馬・下岡蓮杖の湿板写真ネガ原
板が多数含まれていることが、現像技法の違いなどから明らかとなった。こ
の成果は、朝日新聞朝刊文化欄(二〇一一年一一月二三日)において紹介さ
れた。
2、ウィーン国立民族学博物館
一九世紀日本関係古写真コレクションを閲覧調査した。コレクションに
は、熊本の写真家冨重利平、日清戦争を記録した小倉倹司の写真が含まれて
いることが判明した。
3、オーストリア国立工芸美術館付属図書館
Wilhelm Burger が、日本から帰国した後の一八七一年に皇帝フランツ・
ヨーゼフ一世に奉呈した写真アルバムと、当時の美術館館長の求めに応じて
日本の工芸品をBurger が撮影したコレクションについて閲覧調査した。
4、バード・アウスゼー郷土資料館
Burger の弟子で、一五才で日本に渡りBurger 帰国後も日本に留まった
Michael Moser のコレクションについて、Moser の故郷であるバード・アウ
スゼー地方にある郷土博物館にて閲覧調査した。その結果、Moser が写真
を担当した『ファー・イースト』誌のオリジナル湿板ネガが現存することが
判明した。またコレクションの多くは、現在もバード・アウスゼー近くの村
にお住まいのMoser のご子孫が大切に保管されているとの所在情報を得る
ことができた。
5、ミュンヘン国立民族学博物館
オーストリア人写真家のライムンド・フォン・スティルフリードのコレク
ションを中心とする日本関係古写真を閲覧調査した。とくにスティルフリー
ドが、一八九〇─一八九一年に北海道で撮影したアイヌ関係写真のアルバム
について、テキスト情報も含めて熟覧調査した。
6、ミュンヘン州立民族学博物館
同館が所蔵する日本関係古写真コレクションの閲覧調査を行った。コレク
ションは、横浜写真を中心とするお土産写真で構成されていることが判明し
た。
その他、ウィーン滞在中には、Michael Moser の孫であるAlfred Moser
氏と面談し、同氏が所蔵している古写真と絵画資料からなるMichael Moser
旧蔵アルバムを閲覧する機会を得た。

(保谷 徹・箱石 大・谷 昭佳)

『東京大学史料編纂所報』第46号