77.イェール大学バイネキ稀覯書図書館所蔵日本文書コレクション調査

二○一○年九月~一二月に、イェール大学(Yale University)に出張した際、同大学バイネキ稀覯書図書館(Beinecke Rear Book and Manuscripts Library)において、昨年度に続き、日本文書コレクション(Japanese Manuscript Collection: Japanese MSS)の調査を行った。朝河貫一蒐集史料であるJapanese MMSについては、『東京大学史料編纂所報』四三号(二○○八年一○月)の「イェール大学バイネキ稀覯書図書館所蔵日本文書コレクション調査」(一一三~一二七頁)を参照されたい。
なお、一○月一三日~一五日、史料保存技術室高島晶彦氏が、Todai Yale Initiative(TYI)における東京大学とYale大学の交流事業の一環としてのYAJ Collectionの修復のための予備調査に東アジア図書館East Asia Library及びバイネキ稀覯書図書館に来訪した際に、調査を補助し、保存技術室Conservation Laboratory及び東アジア図書館との懇談に参加した。また、古代史料部門西田友宏氏が、TYIの若手研究者国際トレーニングプログラム事業(ITP)により、一○月二三~三一日にバイネキ稀覯書図書館にYAJ Collection 及びJapanese MSSの古文書・聖教の調査に来訪した際に、調査を補助した。
○Japanese Manuscript Collection-3
5 関原記大全 Japanese MSS D5 Sekigahara Ki Taizxen 袋綴本合綴 五冊
 袋綴本一五冊(各一冊に二巻を収む。全三十巻)を、五冊分ずつ大和綴にて合綴し洋装本様のクロス背表紙を付ける。国文学研究資料館編目録に、「(写・刊)写、(冊数)3冊、(刊写年時)」(四三頁)とあり。
(1)第一冊 Japanese MSS D5/1-10        袋綴本合綴  一冊
 袋綴本第一冊~第五冊を、大和綴にて合綴する。縦二六・二㎝、横一九・○㎝(第一冊合綴の五冊、大きさ同じにて、以下略)。写本(以下の各冊同じ)。江戸後期、文政十四年(一八三一)写(以下、同じ)。袋綴本一冊に二巻を収める。表紙は第一冊原表紙、裏表紙は第五冊原表紙を使用し、新たに背表紙(濃紫色クロス。以下の各冊同じ)を附し、一冊目の表紙と最終冊の裏表紙を現表紙に使用し、洋装本様にする。新補背表紙題「関原記大全」(白ペイント書き)。原袋綴装第一冊表紙(現表紙となる)右上に蔵書票剥がし取り痕あり。背表紙が表紙側に三・五㎝及ぶので、蔵書票右端は背表紙クロスの下に隠れる。表紙下部に蔵書票(縦二・一㎝、横二・八㎝)の剥がし取り痕あり(第二・第三冊同じ)。一八七三年のMarsh教授寄贈本である本書と、次に掲げる一八九一年受贈の玉海は、袋綴本を合綴し、背表紙を附し、原表紙を表紙に用いて洋装本様に仕立てたてをされたものであり、朝河貫一の第一回帰国による蒐集本が日本で袋綴本を合綴して洋装本に改装しているのとは異なる装訂である。
①原袋綴装第一冊(巻一・巻二)
表紙は薄渋引(以下の全冊同じ。記述略す)にて、合綴本の表紙を兼ねる。中央小口よりに青鉛筆書「1」あり。地小口に墨書「一」あり。地小口中央に五冊通して青鉛筆の縦線あり。地小口のノドよりに赤鉛筆書’Fyd 18 85’(’8
5’の’8’は重書)あり。表紙見返しは楮紙貼りにて空。扉裏に、寄贈書蔵書票(縦九・五㎝、横七・四㎝)あり。蔵書票は、中央のイェール大学紋章の上半部外環に’YALE COLLEGE LIBRARY’とあり、紋章の下に’Presented by’とあり、その下に’Prof. O. C. Marsh / 1873’とある。蔵書票の上半部に、鉛筆書”Beinecke Library / Japanese / MSS / D-5 / 1-10”あり。蔵書票の下方に、鉛筆書”Beinecke Library / Japanese / MSS / D-5 / 1-10”あり。
 本文料紙は、楮紙(以下、全冊同じ)。本文第一丁表の上部に蔵書票(タイプ書’ra ki tai-wei’ あり。その下に鉛筆書’Miyagawa, Ninsai / Sekigahara ki ☐en ( Full accenbry the battle of Sekigahara / 1631) / By Miyakoshi Hideoki, written 1690 / manuscript, 30 ken, in 15 vols. / 15v. in 3. / vol.1’ あり。
 本文は、半丁一○行、一行二六字前後詰め(以下、同じ)。第一丁表に「関原大全序/(中略)/元禄三庚午年至日 筑後州三潴隠士歴裔宮腰秀興書」あり。第三丁表~第九丁表に目録あり。第一○丁表に目録(題「関原記大全巻之一」)あり。第一一丁表に内題「関原記大全巻之一」、第三四丁表に奥題「関原記大全巻之壹終」、その下に岡則玲蔵書印の「氏大/之印」方形朱印(方、一・三㎝)あり。第三五丁表に目録(題「関原記大全巻之貮」)、第三六丁表に内題「関原記大全巻之二」あり。第六○丁表に奥題「関原記大全巻之二終」及び朱印あり。裏表紙見返し、空。
②原袋綴装第二冊(巻三・巻四)
 表紙の右上に鉛筆書「2」、中央小口寄りに青鉛筆書「2」あり。地小口に墨書「二」あり。表紙見返しに寄贈書蔵書票あり。
 第一丁表に目録(題「関原記大全巻参」)あり。第二丁表に内題「関原記大全巻之三」、第二○丁表に奥題「関原大全巻之参終」及び朱印あり。第二○丁裏空。第二一丁表に目録(題「関原記大全巻之四」)あり。第二二丁表に内題「関原記大全巻之四」あり。第四八丁表に奥題「関原記大全巻之四終」及び朱印あり。裏表紙見返し、空。
③原袋綴装第三冊(巻五・巻六)
 表紙の右上に鉛筆書「3」、左中央小口寄りに青鉛筆書「3」あり。表紙見返しにMarsh寄贈書蔵書票あり。
 第一丁表に目録(題「関原大全巻之五」)あり。第二丁表に内題「関原記大全巻之五」、第二三丁表に奥題「関原大全巻之五終」及び朱印あり。第二三丁裏空。第二四丁表に目録(題「関原記大全巻之六」)あり。第二五丁表に内題なし。第五○丁表に奥題「関原記大全巻之六終」及び朱印あり。裏表紙見返し、空。
④原袋綴装第四冊(巻七・巻八)
 表紙の右上に鉛筆書「4」、中央小口寄りに青鉛筆書「4」あり。表紙見返しにMarsh寄贈書蔵書票あり。
 第一丁表に目録(題「関原大全巻参」)あり。第二丁表に内題「関原記大全巻之七」、第二六丁表に奥題「関原大全巻之六終」及び朱印あり。第二六丁裏空。第二七丁表に目録(題「関原記大全巻之八」)あり。第二八丁表に内題「関原記大全巻之八」あり。第四八丁表に奥題「関原記大全巻之八終」及び方形朱印あり。裏表紙見返し、空。
⑤原袋綴装第五冊(巻九・巻十)
 表紙の右上に鉛筆書「5」、中央小口寄りに青鉛筆書「5」あり。表紙見返しにMarsh寄贈書蔵書票あり。
 第一丁表に目録(題「関原大全巻九」)あり。第二丁表に内題「関原記大全巻之九」、第一八丁表に奥題「関原大全巻之九終」及び朱印あり。第一八丁裏空。第一九丁表に目録(題「関原記大全巻之十」)あり。第二○丁表に内題「関原記大全巻之十」あり。第三六丁表に奥題「関原記大全巻之十終」及び朱印あり。裏表紙見返し、空。
(2)第二冊 Japanese MSS D5/11-20        袋綴本合綴  一冊
 袋綴本第六冊~第十冊を、大和綴にて合綴する。縦二六・三㎝、横一九・二㎝(第二冊合綴の五冊、大きさ同じにて、以下略)。写本(以下の各冊同じ)。江戸後期、文政十四年写(以下、同じ)。表紙は第六冊原表紙、裏表紙は第十冊原表紙を使用し、新たに背表紙(濃茶色クロス)を附し、洋装本様にする。新補背表紙題「関原記大全」(白ペイント書き)。原袋綴装第六冊表紙(現表紙となる)右上に蔵書票剥がし取り痕あり。背表紙下部に蔵書票(縦二・一㎝、横二・五㎝)の剥がし取り痕あり。
⑥原袋綴装第六冊(巻十一・巻十二)
 表紙は、合綴本の表紙を兼ねる。右上に鉛筆書「6」、中央小口寄りに青鉛筆書「6」あり。地小口のノド寄りに赤鉛筆書’Fyd 18 75/2’あり。表紙見返しは楮紙貼りにて空。表紙見返しに、Marsh教授寄贈書蔵書票あり。蔵書票の上方に鉛筆書’Miyanaga、Ninsa’あり。蔵書票の上部左に、鉛筆書”Beinecke Library / Japanese / MSS / D5 / 11-20”あり。蔵書票の下方に、鉛筆書”Beinecke Library / Japanese / MSS / D5 / 11-20”あり。
 本文料紙は楮紙(以下、同じ)。扉一丁、本文四二丁。本文第一丁表の上部に蔵書票(タイプ’Sekigahara ki tai-wei’残る)剥がし取り痕あり、その下に鉛筆書’ Sekigahara ki daizen Battle of Sekigahara / by Miyasaki Hideok / 15v.in 3 vol.☐’(鉛筆の線にて抹消)あり。鉛筆書の下に赤鉛筆書’Fyd 18 75│2’ありて摺り消さる。
 扉表に目録(題「関原記大全巻之拾壹」)あり。本文第一丁表に内題「関原記大全巻之十壹」、第二○丁表に奥題「関原記大全巻之十壱終」及び朱印あり。第二○丁裏、空。第二一丁表に目録(関原記大全巻之十貮)、第二一丁裏、空。第二二丁表に内題「関原記大全巻之十貮」、第四二丁表に奥題「関原記大全巻之拾二終」。
⑦原装袋綴装第七冊(巻十三・巻十四)
表紙の右上に鉛筆書「7」、中央小口寄りに青鉛筆書「7」あり。扉、なし。本文六○丁。本文第一丁表に目録(「関原記大全巻之十参」)、第二丁表に内題「関原記大全巻之十参」、第三一丁表に奥題「関原記大全巻之拾三終」及び朱印あり。第三二丁表に目録(「関原記大全巻之十四」)、第三二丁裏、空。第三三丁表に内題「関原記大全巻之十四」、第六○丁表に奥題「関原記大全巻之十四終」。裏表紙見返しに天地逆に寄贈書蔵書票(空)。
⑧原装袋綴装第八冊(巻十五・巻十六)
表紙の右上に鉛筆書「8」、中央小口寄りに青鉛筆書「8」あり。扉、なし。本文五○丁。本文第一丁表に目録(「関原記大全巻之十五」)、第二丁表に内題「関原記大全巻之十五」、第二三丁表に奥題「関原記大全巻之十五終」及び朱印あり。第二五丁表に目録(「関原記大全巻之十六」)、第五○丁表に内題「関原記大全巻之十六」、第五○丁表に奥題「関原記大全巻之十六終」。
⑨原装袋綴装第九冊(巻十七・巻十八)
表紙の右上に鉛筆書「9」、中央小口寄りに青鉛筆書「9」あり。表紙見返しに寄贈書蔵書票。扉、なし。本文四四丁。本文第一丁表に目録(「関原記大全巻之十七」)、第二丁表に内題「関原記大全巻之十七」、第二二丁表に奥題「関原記大全巻之十七終」及び朱印あり。第二三丁表に目録(「関原記大全巻之十八」)、第二四丁表に「関原記大全巻之十八」、第四四丁表に奥題「関原記大全巻之十八畢」。
⑨原装袋綴装第十冊(巻十九・巻二十)
表紙の右上に鉛筆書「10」、中央小口寄りに青鉛筆書「10」あり。表紙見返しに寄贈書蔵書票。扉、なし。本文四二丁。本文第一丁表に目録(「関原記大全巻之十九」)、第二丁表に内題「関原記大全巻之十九」、第一八丁表に奥題「関原記大全巻之十九終」及び朱印あり。第一九丁表に目録(「関原記大全巻之二十」)、第二○丁表に内題「関原記大全巻之二十」、第四一丁表に奥題「関原記大全巻之二十八終」。
(2)第三冊 Japanese MSS D5/21-30        袋綴本合綴  一冊
 袋綴本第十一冊~第十五冊を、大和綴にて合綴する。縦二六・三㎝、横一九・二㎝(第三冊の合綴の五冊、大きさ同じにて、以下略)。写本(以下の各冊同じ)。江戸後期、文政十四年写(以下、同じ)。表紙は第二十冊原表紙、裏表紙は第三十冊原表紙を使用し、新たに背表紙(濃茶色クロス)を附し、洋装本様にする。新補背表紙題「関原記大全」(白ペイント書き)。原袋綴装第十冊表紙(現表紙となる)右上に蔵書票剥がし取り痕(縦二・六㎝)あり。背表紙下部に蔵書票(縦二・一㎝、横二・五㎝)の剥がし取り痕あり。
⑪原袋綴装第六冊(巻十一・巻十二)
 表紙は、合綴本の表紙を兼ねる。右上に鉛筆書「11」、中央小口寄りに青鉛筆書「11」あり。地小口のノド寄りに赤鉛筆書’Fyd 18 75/1’('1’は’3’の誤記か)あり。表紙見返しは楮紙貼りにて空。表紙見返しに、Marsh教授寄贈書蔵書票あり。蔵書票の上方に鉛筆書’Miyanaga、Ninsai’、右上に鉛筆書’3’あり。蔵書票の上部左に、鉛筆書”Beinecke Library / Japanese / MSS / D5 / 21-30”あり。蔵書票の下方に、鉛筆書”Beinecke Library / Japanese / MSS / D5 / 21-30”あり。地小口中央に五冊通して青鉛筆の縦線あり。
 本文料紙は楮紙(以下、同じ)。本文四○丁。本文第一丁表の上部に鉛筆書’ Sekigahara ki daizen Battle of Seki- / gahara - By Miyasaki Hideoki / 15v.in 3 vol.3’(鉛筆の線にて抹消)あり。鉛筆書の下に赤鉛筆書’Fyd 18 75│3’ありて摺り消さる。
 本文第一丁表に目録(「関原記大全巻之二十一」)、第二丁表に内題「関原記大全巻之二十一」、第二○丁裏に奥題「関原記大全巻之二十一終」及び朱印あり。第二一丁表に目録(関原記大全巻之二十二)、第四二丁表に奥題「関原記大全巻之二十二終」と朱印あり。
⑫原装袋綴装第十一冊(巻二十三・巻二十四)
表紙の右上に鉛筆書「12」、中央小口寄りに青鉛筆書「12」あり。表紙見返しに寄贈書蔵書票。本文三六丁。本文第一丁表に目録(「関原記大全巻之二十三」)、第二丁表に内題「関原記大全巻之二十三」、第十六丁裏に奥題「関原記大全巻之二十参終」及び朱印あり。第一七丁表に目録(「関原記大全巻之貮十四」)、第一八丁表に内題「関原記大全巻之貮十四」、第三六丁表に奥題「関原記大全巻之二十四終」。
⑬原装袋綴装第十三冊(巻二十五・巻二十六)
表紙の右上に鉛筆書「13」、中央小口寄りに青鉛筆書「13」あり。本文二九丁。本文第一丁表に目録(「関原記大全巻之貮十五」)、第二丁表に内題「関原記大全巻之二十五」、第一六丁裏に奥題「関原記大全巻之二十五終」及び朱印あり。第一七丁表に目録(「関原記大全巻之二十六」)、第二九丁表に内題「関原記大全巻之二十六」、第二六丁表に奥題「関原記大全巻之二十六終」。
⑭原装袋綴装第十四冊(巻二十七・巻二十八)
表紙の右上に鉛筆書「14」、中央小口寄りに青鉛筆書「14」あり。表紙見返しに寄贈書蔵書票。本文七九丁。本文第一丁表に目録(「関原記大全巻之二十七」)、第二丁表に内題「関原記大全巻之二十七」、第三八丁表に奥題「関原記大全巻之二十七終」及び朱印あり。第三九丁表に目録(「関原記大全巻之二十八」)、第四○丁表に「関原記大全巻之二十八」、第七九丁表に奥題「関原記大全巻之貮十八終」。
⑮原装袋綴装第十冊(巻十九・巻二十)
表紙の右上に鉛筆書「15」、中央小口寄りに青鉛筆書「15」あり。表紙見返しに寄贈書蔵書票。本文五二丁。本文第一丁表に目録(「関原記大全巻之貮十九」)、第二丁表に内題「関原記大全巻之貮十九」、第一三丁表に奥題「関原記大全巻之貮十九終」及び朱印あり。第一四丁表に目録(「関原記大全巻之参十」)、第十五丁表に内題「関原記大全巻之参十」、第五二丁表に跋、第五二丁裏に跋尾「宝暦五乙亥二月/関原記大全巻之参十終 全部三十巻」、書写奥書「于時文政十四辛卯年初夏中旬写之/岡則玲自書 (朱印)」。
6 玉海 Japanese MSS D6 Gyokukai    袋綴本合綴 二冊
 袋綴本一○冊(各一冊に二巻を収む。全二十巻)を、五冊分ずつ大和綴にて合綴し洋装本様のクロス背表紙を付ける。5関原記大全と同装訂。国文学研究資料館編目録に、「(写・刊)写、(冊数)2冊、(刊写年時)」(四三頁)とあり。
(1)第一冊 Japanese MSS D6/1-5        袋綴本合綴  一冊
 袋綴本第一冊~第五冊を、大和綴にて合綴する。縦二八・三㎝、横一九・七㎝(第一冊合綴の五冊、大きさ同じにて、以下略)。写本(以下の各冊同じ)。江戸後期写(書写年不詳。以下、同じ)。表紙は第一冊原表紙、裏表紙は第五冊原表紙を使用し、新たに背表紙(茶色クロス。以下の各冊同じ)を附し、一冊目の表紙と最終冊の裏表紙を現表紙に使用し、洋装本様にする。新補背表紙題「玉海」(白ペイント書き)。原袋綴装第一冊表紙(現表紙となる)右上に蔵書票剥がし取り痕あり。背表紙が表紙側に三・五㎝及ぶので、蔵書票右端は背表紙クロスの下に隠れる。表紙下部に蔵書票(縦二・一㎝、横二・八㎝)の剥がし取り痕あり(第二冊同じ)。本書は、一八九一年受贈本。各冊裏表紙見返し左下隅裏の書き入れに、現在の冊次と異なる数字書き入れがあり、本書もと一五冊以上からなっていたことがわかるので、僚巻五冊が共には伝来していないことがわかる。
①原袋綴装第一冊(嘉應元年)
表紙は楮紙渋引重紙(以下の全冊同じ。記述略す)にて、合綴本の表紙を兼ねる。地小口、ノド寄りにペン書「1」、小口寄りにペン書「Fyd 1632」あり。右に墨書「嘉應元年」、左に外題墨書「玉海」、その下に鉛筆書「1」、中央に鉛筆書「1169-72」あり。表紙見返し(楮紙)中央に寄贈書蔵書票(縦九・五㎝、横七・四㎝)あり。蔵書票中央の大学紋章の上に半孤状に’YALE UNIVERSITY LIBRARY’とあり、紋章の下の’Presented by’の下欄は空で、その下に’1991’(寄贈年)あり。蔵書票の左上部に鉛筆書’Beinecke Library / Japanese / MSS / D6 / 1-5’、右上部に鉛筆書(抹消)’Fyd 16 32.’、‘Fgcd4 / 200a / 1 ‘あり。
 扉・本文料紙は、楮紙(以下、全冊同じ)。扉一丁、本文二四丁。扉表、上部中央に蔵書票剥がし取り痕(下部欠失、横5㎝)ありて、鉛筆書’Gyoku kai’(鉛筆横線で抹消」)あり。この蔵書票は、表紙見返しに原形が影となり写る。蔵書票剥がし取り痕の右に鉛筆書’Kujo, Kanezane’あり。上部中央に’Gioku kai(Giokkai) “Jewel-sea” - / Diary, 1169-1200 - / Author (or authors) unkown, / ☐☐s. 6lv. – lv.supplement / 62v. in 10. Vol.1.’ あり。扉表右下に鉛筆書’Beinecke Library / Japanese / MSS / D6 / 1-5’あり。
 本文は、半丁一○行、一行一七字詰め(以下、諸冊同じ)。本文第一丁表に書出し「嘉應元年/正月」。十二月二十九日条までを収む。第二四丁裏に蔵書印「☐果/宋☐」方形朱印(方二・六㎝)あり。裏表紙見返しは空にて、左下隅裏に書き入れ「五」あり。
②原袋綴装第二冊(嘉應二年春)
 表紙右上、赤ペン書’92/2’、右に墨書「嘉應二年春」、左に外題墨書「玉海」、その下に青鉛筆「3」あり。表紙見返しに寄贈蔵書票(書き入れなし)あり。扉一丁、本文四九丁。扉表裏空。本文第一丁に書出「嘉應二年/正月大」。三月二十八日条までを収む。本文中に朱校訂注あり。蔵書印なし。裏表紙見返し空、左下隅裏に書き入れ「六」あり。
③原袋綴装第三冊(嘉應二年夏)
 表紙右上、赤ペン書’92/3’、右に墨書「嘉應二年」、左に外題墨書「玉海」、その下に青鉛筆「3」あり。表紙見返しに寄贈蔵書票(書き入れなし)あり。扉一丁、本文五六丁。扉表裏空。本文第一丁に書出「嘉應二年夏/四月大」。十二月卅日条までを収む。巻末に蔵書印。裏表紙見返し空、左下隅裏に書き入れ「七」あり。
④原袋綴装第四冊(承安二年夏)
 表紙右上、赤ペン書’92/4’、右に墨書「承安二年夏」、左に外題墨書「玉海」、その下に青鉛筆「4」あり。表紙見返しに寄贈蔵書票(書き入れなし)あり。扉一丁、本文三七丁。扉表裏空。本文第一丁に書出「承安二年夏 歳次壬辰/四月」。六月卅日条までを収む。巻末に蔵書印。裏表紙見返し空、左下隅裏に書き入れ「九」あり。
⑤原袋綴装第五冊(承安貮年冬)
 表紙右上、赤ペン書’92/5’、右に墨書「承安二年冬」、左に外題墨書「玉海」、その下に青鉛筆「5」あり。表紙見返しに寄贈蔵書票(書き入れなし)あり。扉一丁、本文五○丁。扉表裏空。本文第一丁に書出「承安二年冬〈十二月/閏十二月〉/十二月」。第六丁裏に「異本/十二月/一日(下略)¥あり。裏表紙見返しに蔵書印。裏表紙見返し空、左下隅裏に書き入れ「十」あり。
(2)第二冊 Japanese MSS D6/6-10        袋綴本合綴  一冊
 袋綴本第六冊~第十冊を、大和綴にて合綴する。縦二八・二㎝、横一九・七㎝(第二冊合綴の五冊、大きさ同じにて、以下略)。写本(以下の各冊同じ)。江戸後期写(書写年不詳。以下、同じ)。表紙は第六冊原表紙、裏表紙は第十冊原表紙を使用し、新たに背表紙(茶色クロス)を附し、一冊目の表紙と最終冊の裏表紙を現表紙に使用し、洋装本様にする。新補背表紙題「玉海」(白ペイント書き)。原袋綴装第六冊表紙(現表紙となる)右上に蔵書票剥がし取り痕あり。蔵書票右端は背表紙クロスの下に隠れる。表紙下部に蔵書票(縦二・一㎝、横二・八㎝)の剥がし取り痕あり。
①原袋綴装第六冊(承安三年春)
表紙は合綴本の表紙を兼ねる。地小口、ノド寄りにペン書「2」、小口寄りにペン書「Fyd 1632」あり。右に墨書「承安三年」、左に外題墨書「玉海」、その下に鉛筆書「6」、中央に鉛筆書「1173-75」あり。表紙見返し(楮紙)中央に寄贈書蔵書票あり。紋章の下の’Presented by’の下欄は空で、その下に’1991’(寄贈年)あり。蔵書票の左上部に鉛筆書’Beinecke Library / Japanese / MSS / D6 / 6-10’、右上部に鉛筆書(抹消)’Fyd 16 32/2.’、‘Fgcd4 / 200a / 2 ‘あり。扉表右下に鉛筆書’Beinecke Library / Japanese / MSS / D6 / 1-5’あり。
 扉・本文料紙は、楮紙(以下、全冊同じ)。扉一丁、本文六二丁。扉表、上部中央に蔵書票剥がし取り痕(下部欠失、横四・七㎝)ありて、鉛筆書’Gyoku kai’(鉛筆横線で抹消」)あり。上部中央に’Gioku kai Diary, 1169-1200 - / Anon -, /62v. in 10. Vol.2.’ あり。
 本文は、半丁一○行、一行一七字詰め(以下、諸冊同じ)。本文第一丁表に書出し「承安三年/正月」。六月卅日条までを収む。第六二丁裏に蔵書印あり。裏表紙見返しは空にて、左下隅裏に書き入れ「十一」あり。
⑦原袋綴装第二冊(承安三年秋冬)
 表紙右上、赤ペン書’92/7’、右に墨書「承安三年秋冬」、左に外題墨書「玉海」、その下に青鉛筆「7」あり。表紙見返しに寄贈蔵書票(書き入れなし)あり。扉一丁、本文四五丁。扉表裏空。本文第一丁に書出「承安三年/十月」。十二月十六日条に関白道家移徙儀図あり。第八三丁裏に蔵書印。裏表紙見返し空、左下隅裏に書き入れ「十二」あり。
⑧原袋綴装第八冊(承安四年春夏)
 表紙右上、赤ペン書’92/8’、右に墨書「承安四年春夏」、左に外題墨書「玉海」、その下に青鉛筆「8」あり。表紙見返しに寄贈蔵書票(書き入れなし)あり。扉一丁、本文五五丁。扉表裏空。本文第一丁に書出「承安四年春上 歳次甲子/正月小」。十二月卅日条までを収む。裏表紙見返し蔵書印、左下隅裏に書き入れ「十二」あり。
⑨原袋綴装第九冊(承安四年冬)
 表紙右上、赤ペン書’92/9’、右に墨書「承安四年冬」、左に外題墨書「玉海」、その下に青鉛筆「9」あり。表紙見返しに寄贈蔵書票(書き入れなし)あり。扉一丁、本文五六丁。扉表裏空。本文第一丁に書出「承安四年冬/十月」。十二月二十八日条までを収む。本文中に朱校訂注あり。第五六丁裏に蔵書印。裏表紙見返し空、左下隅裏に書き入れ「十四」あり。
⑩原袋綴装第十冊(承安五年春)
 表紙右上、赤ペン書’92/10’、右に墨書「承安五年春」、左に外題墨書「玉海」、その下に青鉛筆「10」あり。表紙見返しに寄贈蔵書票(書き入れなし)あり。扉一丁、本文六三丁。扉表裏空。本文第一丁に書出「承安五年 歳次乙未/正月」。第一丁第一○行に「次余退出○/此下脱漏」、第一丁裏に「此半紙悉出次下而又出此錯簡也」と注し全文左に「ゝ」を附す。
 以下、猪熊関白記(Japanese MSS D7/1-33。袋綴本三三冊を洋装本五冊に改装。江戸時代後期写)、勘仲記(Japanese MSS D8/1-58袋綴本五八冊を洋装本八冊に改装。明治中期写。哲学書院蔵書印あり)を調査したが、のべ九一冊分の書誌情報となるので、別に機会を得て紹介することする。朝河コレクションを核とするJapanese MSSは、今回紹介したように、Marsh教授寄贈本など、朝河が一九○七~九年に日本で蒐集した典籍・文書以外にも古典籍があることを示すことができた。Japanese MSSは、洋装本での冊数は、国文学研究資料館編の目録に示されているが、合綴される前の袋綴本の冊数は、洋装本の数倍に上り、膨大な点数となる。これまで、採訪調査報告では、三回にわたり、史料集編纂の核となる日記類を収めるD分類を1から調査した結果を示したが、D1からD8まででも和本で200冊前後の分量となり、Japanese MSSの悉皆総合調査は膨大な日数を要することがわかる。朝河の蒐集方針により、Japanese MSSの大部分は、一部の古文書を除いて、近世後期から明治中期の写本である。しかし、希少な蔵書印のものや、所蔵者の履歴を調査しなければならないもの、また明治期の写本の中にも史料編纂掛所蔵副本や哲学書院書写本などがあり、江戸時代末から明治中期までの古典籍の伝来・書写の諸相が示されている。東京大学とYale大学の学術交流の一環として、YAJコレクションのみならず、Japanese MSSも対象とした総合学術調査の進展が期待されるところである。

(石上英一)

『東京大学史料編纂所報』第45号