76.ロシア連邦サンクトペテルブルグ市所在日本関係史料の調査

二〇〇九年一〇月一一日から一七日にかけて、折からの吹雪の中、ロシア連邦サンクトペテルブルグ市に出張した。参加者は、保谷 徹・小野 将・加藤友康所長・谷昭佳、そして一日遅れで麓 慎一准教授(新潟大学)である。また現地では、サンクトペテルブルグ国立大学東洋学部ワジム・クリモフ教授に調査協力をあおいだ。
1、ロシア科学アカデミー東洋古籍文献研究所(旧東洋学研究所)
 イリナ・ポポワ所長と面会し、次いで同研究所が所蔵するサハリン・アイヌとの交易帳簿二点の原本調査と補充撮影をおこなった。前年度に提供された画像には、紙折れや脱落、とくに紙こよりで綴った部分が全く撮影されていないなど不十分な点があったため、結果的に相当部分を撮り直すことになった。また新たに、松前藩で作成・使用されていたと思われる蝦夷地図を閲覧調査した。
2、ロシア国立歴史文書館
移転後の新館を訪問し、依頼した史料複製を画像データで受領した。ソコロフ館長と面会し、館内見学ののち、ヒペリオン出版社スモリャコフ社長をまじえ、日本関係史料解説目録の出版について打ち合わせた。
3、ロシア国立海軍文書館
 移転後の新館を訪問し、チェルニャフスキー新館長と面会した。新館長との間で史料調査・学術協力に関する覚書延長の調印をおこなった。館内見学のうえ、日本関係史料を画像データで受理した。
4、ロシア科学アカデミー人類学民族学博物館(クンストカーメラ)
 クーピナ副館長、日本担当のシニーツィン上級研究員らと面会し、幕末・明治期の海軍将校ポシェットの古写真コレクションを閲覧した。写真は名刺写真・名刺サイズの風景写真など八七枚であり、デジタル撮影データの提供を依頼して後日受理した。その後、同館内を案内され、日本関係コレクションの概要を説明していただいた。
 上記出張期間中、ロシア国立海軍文書館ソボレフ前館長に面会し、同館長のこれまでの研究協力に対し、感謝状と記念品を手渡した。また、歴史文書館長・海軍文書館長らと日本国総領事館に招待され、川端一郎総領事と会食する機会を得た。ここに記して感謝の意を表しておきたい。

(保谷 徹・小野 将・加藤友康・谷昭佳)

『東京大学史料編纂所報』第45号