62.地蔵院聖教の調査・撮影

二〇〇九年一〇月一五日から一九日、同一一月二六日から三〇日までの二回にわたり、巨鼇山地蔵院萩原寺(香川県三豊郡観音寺市大野原町萩原、古義真言宗大覚寺派)に出張し、同寺所蔵の「地蔵院聖教」の調査及びデジタル撮影を行った。本調査は四国史料調査の一環であり、一九八八年度より継続しており、本年度調査は第二三・二四回である。「地蔵院聖教」の中核となるものは萩原寺中興第一世真恵(宝徳元年1449寂)の時代に蒐集、或いは授受された小野流の報恩院流儀海方・実深方、実賢流覚智方・同山本方、金剛王院流覚智方、石山流人師方、中院流、さらに広沢流の慈尊院流・西院流能禅方・華蔵院流などに関する聖教である。
 本年度は昨年度と同様に、デジタル写真撮影の準備作業としての再整理(編年)及び修補作業とデジタル写真撮影を行い、鎌倉及び南北朝時代書写の聖教類の撮影を行った。なお、本年度第二回目にはボン大学の宮田奈々氏に調査に参加していただいた。また、本史料調査を開始され、長年にわたり調査を指導されてきた石上英一氏が、定年により本年度をもって退職されることとなった。銘記して深甚の謝意を表する。調査目録の原本は古代史料部門研究室に保管している。貴重な所蔵史料の調査を許可された萩原寺住職秋山行徳師に謝意を表する。

(石上英一・山口英男・厚谷和雄・末柄 豊・及川 亘・高橋典幸・川本慎自・西田友広・遠藤珠紀・谷 昭佳・山口悟史・高山さやか・中藤靖之)

『東京大学史料編纂所報』第45号