74.石垣・与那国史料調査

二○○九年二月二一日より二六日、沖縄県に出張し、石垣市及び与那国町で、南島画像関係資料に関わる琉球馬事関係史料の調査を行った。この調査は、情報学環の歴史情報論の講義「南島関係画像史料の研究」のために行った。調査にあたっては、琉球大学山里純一教授に同行していただき、案内、教示を得た。今回の調査は、琉球王から徳川将軍へ貢進される「御馬」の調達が琉球王府の御厩の別当により宮古・八重山より行われること、那覇市歴史博物館所蔵複写版「真姓家譜」真喜屋家の元版が一九七三年段階で石垣市に伝えられていたことによる。「真姓家譜」真喜屋家が神當流馬術、宮古・八重山よりの馬の徴発と将軍への貢進を記録することは、「南島雑話とその周辺」六・七・九・一四(『画像史料解析センター通信』三四・三五・三九・四四号、二○○六年七月・一○月、二○○七年一○月、二○○九年一月)に記したところであり、また今回の調査の成果の一部は、すでに、「南島雑話とその周辺」一五(『画像史料解析センター通信』四五号、二○○九年四月)に紹介している。石垣市所在の馬事関係史料については、得能壽美「昔の八重山の馬の話」(『八重山毎日新聞』二○○二年一月一一日号)により総括的な紹介がなされている。
二月二一・二二・二六日、石垣市八重山博物館において、史料を閲覧した。また、博物館に展示中の糸洲家文書「馬の図帖」を見学した。閲覧にあたっては、下地傑学芸係長、寄川和彦学芸員にお世話になった。八重山博物館収集の八重山家譜の複写版の一部を閲覧し、山陽姓家譜などの若干の馬事関係史料を見出した。二月二三日、石垣市役所総務部市史編集課において、八重山家譜の複写版の一部を閲覧した。それらは、「南島雑話とその周辺」において紹介する。
二月二二日、山里氏と、真姓門中の真喜屋克実氏を訪問し、真姓大宗津覇家の津覇實雄・正子氏編集の『真姓門中家譜』(私家版、二○○一年三月)、克実氏の父君が作成された真姓の略系図「真姓系図」、「真姓家譜」真喜屋家の青焼版(那覇市歴史博物館が所蔵する一九七八年受贈の複写版の元の青焼版と同版)を拝見した。真喜屋氏によれば、「真姓家譜」真喜屋家の青焼版を父君に寄贈された方(同じ真姓中宗の系統であるが別系と推測される)は存じ上げないとのことであった。
二月二二日、山里氏の案内で、石垣市白保地区に飼養されている八重山馬を見学した。二月二三日には、山里氏とともに、宮良川土地改良区理事東田盛正氏より、八重山馬保存事業について教示を得た。二月二四・二五日、与那国町に赴き、与那国馬について、NPO法人「ヨナグニウマふれあい広場」代表久野雅照氏、与那国馬保存会顧問入福浜賢氏より、保存事業について教示を得た。

(石上英一)

『東京大学史料編纂所報』第44号