53.越中国射水郡鳴戸開田地図(天平宝字三年)の調査

一月九日、奈良国立博物館(奈良県奈良市登大路町)において、「越中国射水郡鳴戸開田地図(天平宝字三年)」の調査を行った。同図は、東大寺に伝来したいわゆる「東大寺開田図」のひとつで、寛政六年(一七九四)に藤貞幹が作成した模写本が、横山由清編『田制篇』(一八八三念)に掲載されている。いつの時期か寺外に出て、史料編纂所では、明治三五年(一九〇二)に福井崇蘭館の所蔵となっているものを採訪調査している。その際に撮影したと思われる台紙付写真により、『大日本古文書』東大寺文書四(『東大寺開田図』、一九六六年)に京都市・福井成功氏所蔵として収録し、『日本荘園絵図聚影』一・上でも『東大寺開田図』の写真図版を複製して収録した。近年まで永く実見されることのない状況であったが、今般、奈良国立博物館の所蔵に帰し(野尻忠(口絵解説)「越中国射水郡鳴戸開田地図」、『日本歴史』七一八、二〇〇八・三)、史料編纂所では百年以上を経て再び調査する機会を得た。調査には、宮内庁正倉院事務所の杉本一樹氏・飯田剛彦氏・佐々田悠氏にも参加していただいた。調査に際しては、奈良国立博物館・野尻忠氏に種々便宜を図っていただいた。ここに謹んで謝意を表する。

(石上英一・山口英男・稲田奈津子・村岡ゆかり)

『東京大学史料編纂所報』第44号