東大寺図書館所蔵次第本部の調査

二〇〇七年一月、東大寺図書館において、貴重書函第一七一号次第本部の
予備調査を行った。東京大学史料編纂所所蔵の簡略目録によるに、その総数
は一〇七六件。四度加行、諸尊法目録、薬師法他の密教修法、受戒作法、灌
頂作法・伽陀・経供養作法、法会表白などがある。所作作法や表白など、実
際の仏事に際して使用される実用性の高いテキスト類である。ごく一部室町
中後期のものがある以外は、江戸時代の写本である。江戸時代の東大寺の宗
教活動(特に密教)を知る上での貴重な史料と言える。また、奥書によって
は、鎌倉期の本奥書を書写しているものもあり、中世密教史研究にとっても
高い価値を持つ。今回の調査では、第一号の四度加行次第から、第一四号E
の両部合行法次第まで、一八点(五四冊)について調書作成した。その詳細
は割愛するが、鎌倉後期の醍醐寺報恩院憲深を祖本とするものが、多数を占
めている。また本調査は、指図類の所在調査の一環として行ったものである。
今回の調査範囲の限りでも、三点の壇図が確認された。現段階では、想定し
たほどには指図が含まれないと判断されるものの、なお今後の調査が必要で
あろう。

                              (厚谷和雄・高橋慎一朗・遠藤基郎)

『東京大学史料編纂所報』第42号