35.『大日本史料』第十編之二十五収録史料の調査・校正

二〇〇五年一一月二八日から二九日まで、武田科学振興財団杏雨書屋(大阪市淀川区)におもむき、本年度刊行『大日本史料』第十編之二十五の天正二年一一月一七日条に収録を予定する史料の調査および原本校正を行なった。
同条は正親町天皇が曲直瀬道三の著した『啓迪集』を叡覧し、道三に翠竹院の号を賜い、禅僧策彦周良に同書の序(題辞)を草せしめたという内容である。杏雨書屋は曲直瀬道三関係史料を多く収蔵している。なかでも『啓迪集』は国内外に諸本あるなかで、杏雨書屋所蔵本は策彦自筆題辞・道三自筆自序・本文で、曲直瀬今大路家伝来であり、重要美術品の指定を受けている良本である。
今回の収録にあたり、策彦自筆題辞については、杏雨書屋本の写真帳に拠りこれを収録した。また道三自序については、自筆自序を備える諸本を比較検討し、捺されている朱印が他本にない特徴をもつ「木下文書」収録のもの(本所影写本)を底本とし、台湾故宮博物院本・三原市立図書館本にて校合している。
またこのほか、杏雨書屋所蔵の道三関係史料を調査し、「道三家記」(整理番号・乾五四〇一)から『啓迪集』叡覧関係記事を抜粋収録した。
調査にあたりご高配を賜り、掲載の許可をいただいた武田科学振興財団および同理事長横山巌氏、同部長清水光昭氏に厚く感謝申し上げる。

(金子 拓)

『東京大学史料編纂所報』第41号