66 鍋島家古写真の調査・撮影

二〇〇四年十一月二九日から十二月四日にかけて、佐賀県佐賀市の鍋島報效会徴古館を訪問し、佐賀鍋島家が所蔵する古写真調査をおこなった。
徴古館には、安政六年の鍋島直正公の写真をはじめ、幕末から明治・大正期にかけての多くの貴重な写真史料が保存されており、その総数は数千点から一万点と推定される。古写真研究プロジェクト(画像史料解析センター)では、鍋島報效会のご許可とご協力をいただき、この古写真コレクションの調査とデジタル化に取り組んでいる。今回の調査もこのプロジェクトの一環として行なわれ、共同研究員石川寛夫教授(九州産業大)、同吉田成助教授(東京工芸大)、研究協力者川上力氏(九州産業大)の参加をえた。
コレクションは箱単位で整理されているため、年代の古いものを含む箱から順に書誌データ作成と高精細デジタル撮影をすすめた。撮影は写真の表と裏、フレームについておこない、石川・川上両氏に出張調査(のべ十一日間)を委託した分を含め、計一二四一件の撮影データを得ている。
今回はまだコレクションのごく一部を調査したにすぎないが、すでにいくつかの興味深い発見もあった。一例をあげるならば、清水東谷撮影の名刺写真に写っている敷物の柄が、今まで内田九一の撮影とされてきた写真中の敷物と同じであることが判明している。これにより、内田九一撮影とされてきた明治初年頃の高官などの名刺写真には、清水東谷撮影によるものが含まれることが明らかとなった。調査の進展にともない、さらに多くの新知見が得られるものと期待している。

(谷 昭佳・箱石 大・保谷 徹)

『東京大学史料編纂所報』第40号