東京大学史料編纂所

HOME > 編纂・研究・公開 > 所報 > 東京大学史料編纂所報第39号(2004年)

刊行物紹介

大日本近世史料 市中取締類集 二十六

本冊には、旧幕府引継書類の一部である市中取締類集のうち旧里帰農之部一冊、人別出稼之部一冊を収めた。
旧里帰農之部には、「御代官申上候帰農一件」の一件を収める。天保十四年三月、幕府は天保改革の一環として人返し法を発令するが、それより前の天保九年閏四月、諸代官に対し「在々人別増方御府内人別減方取締之儀」、すなわち村々の人口を増やし、江戸の人口を減らす方策を諮問した。旧里帰農之部には、この諮問に対する三四名の代官からの回答が収められており、これは当時の代官数の約八割に当たる。時期的には、諮問と同月の天保九年閏四月から翌十年六月までに上申されたもので、農村人口の減少と江戸の下層人口の増加の要因・背景などをめぐって各代官の意見が述べられている。対応策としては、村々では出稼奉公の人数・期限の制限、欠落人の取締りの強化などによって江戸への流入人数を抑え、江戸でも人別取締りを厳重にし、容易に江戸住居ができないようにして帰農を促す、といったところが平均的な意見である。西国筋郡代寺西元栄のように長文の回答を寄せた代官がいる一方で、羽倉秘道の回答は非常に簡単であり、江川英龍に至っては「種々勘考仕候得共、別段存付之儀も無御座候」とそっけない。
 人別出稼之部には、天保十三年(一八四二)七月から嘉永元年(一八四八)十月までにわたる文書をまとめた六件を収める。第一件は、人別改方に関わる老中書取の内容について評議した町奉行の上申書とその添付史料から成る。天保十三年十月に出された上申書では、在方人別の減少を抑えるため江戸人別へ在方の者が新規に加入することを禁じるという、書取で示された方針に従い、人別改を徹底するための種々の手続きについてふれるとともに、非人小屋の取建が必要との判断に基づいて、取建の場所や仕様、諸費用について具体的に言及している。これをうけて、同年十二月には無宿非人寄場を早々に取建てるようにという老中の指示が出された。上申書には、触書案の類や非人小屋の仕様・入用積、非人頭の差出した書付類など一三点が添えられ、第一件だけで人別出稼之部の三分の二の量を占めている。人別改の方法等について評議が行われる中で、鞍馬願人の取締方(第二件)や、出家の者等への免許状交付に関する規定、人別書上雛形(第三件)等が検討され、また、実際の人別改の際に人別帳の紙代を地借店借に出銭させる場末の町があるとの風聞から、これを禁ずる旨を町奉行が申渡している(第四件)。このほか、北品川宿の御殿山地内に拝借地をもつ者の人別の扱い(第五件)や、紀州藩領からの出稼人別についての調査(第六件)に関する史料も収められている。
(例言一頁、目次八頁、本文二六八頁、本体価格五、二〇〇円)
担当者 佐藤孝之・杉森玲子


『東京大学史料編纂所報』第39号p.43