61.北京市所在の前近代日本関係史料の調査

二〇〇二年九月八目から十五日まで、窯武彦氏 (熊本大学教育学部助教授)、浅見、五野井、松桧澤の四名は、中華人民共和国北京市にある中国第一歴史档案館、中国国家図書館(北京図書館)、北京大学図書館、中国社会科学院経済研究所に赴き、各機関が所蔵する前近代日本関係史料の調査を行なった。以下、各機関における調査の概略を記す。
①中国第一歴史档案館
 昨年度に引き続き、同館所蔵の日本関係档案の調査を行なった。同館における史料調査の成果として、『東京大学史料編纂所研究紀要』第一三号(二〇〇三年一二月)に、黨武彦「清代档案史料論序説-乾隆期の日本人漂流民送還関係軍機処録副奏摺を素材として-」及び浅見雅一「中国第一歴史档案館所蔵の前近代日本関係档案について」の二編を発表したので、詳細については両報告を参照されたい。
②中国国家図書館 (北京図書館)
 同館の善本閲覧室において、日本関係記事を含む漢籍の調査を行なった。その際、次の目録を参考にした。
 北京図書館編『北京図書館古籍善本書目』五冊(書目文献出版社、一九八七年)
 昨年度は、同館の善本閲覧室において北京のカトリック教会のひとつである北堂の図書館がかつて所蔵していた「北堂文庫」の欧文書籍の調査を行なうことができた。しかし、「北堂文庫」 は整理中のため原則的に非公開とのことであり、本年度は昨年度のような十分な調査が認められず、閲覧点数が著しく制限された。尚、「北堂文庫」の欧文書籍については次の目録を参考にした。
 Mission Catholique des Lazaristes a Pekin,Catalogue of the Pei-T'ang Library,Lazarist Mission Press,Peking,1949.
 「北堂文庫」以外の欧文書籍については、日本語書籍と併せて次の目録に掲載されており、本調査でも参考にした。
 顧韓主編『中国国家図書館外文善本書目』(北京図書館出版社、二〇〇一年)
③北京大学図書館
 善本閲覧室において、日本関係記事を含む漢籍の調査を行なった。本年度は同館の調査には十分な時間を充てることができなかったので、予備調査のような形になった。尚、漢籍については、次の目録を参考にした。
 北京大学図書館編『北京大学図書館戒古籍善本書目』(北京大学出版社、一九九五年)
 日本語書籍については、次の目録が出版されている。
 李玉編『北京大学図書館日本版古籍目録』(北京大学出版社、一九九五年)
④中国社会科学院・経済研究所
 同研究所の朱蔭貴教授の案内により、同研究所附属図書館の調査を行なった。同館には漢籍の他に明治期以降に出版された日本語書籍を若干所蔵しているが、刊行された蔵書目録はない。尚、同研究所には北京日本大使館の旧蔵档案が所蔵されているが、朱教授によれば、未整理等の事情により現時点では非公開とのことであった。
                  (浅見雅一・五野井隆史・松澤克行)

『東京大学史料編纂所報』第38号