60.上海市・杭州市・寧波市所在前近代日本関係史料の調査

二〇〇二年十月十五日から二十三日まで、榎原雅治、山田邦明、渡邉正男、及川亘、藤原重雄、川本慎自、黒嶋敏の七名は、中華人民共和国上海市・杭州市および寧波市を訪問し、明代を中心とする日本関係史科の調査と関連史跡の見学を行った。本調査には通訳担当として、青山学院大学大学院生の萩原哉氏の協力と参加を得た。
 主な調査先は上海博物館、上海市歴史博物館(以上上海市)、浙江大学日本文化研究所、浙江省博物館(以上杭州市)、天一閣、阿育王寺、天童寺、普陀山(以上寧波市)であり、これらの各機関で日本関係史料情報を調査収集し、明代における日本との通交で大きな意義を持つ関連史跡の現地調査を行った。とくに、浙江大学日本文化研究所では同所所長王勇氏、副所長王宝平氏、所員劉岳兵氏と面談し、前近代の中日関係史料の研究および中日関係史料のデータベース化について意見を交換できたことは大きな成果である。
同所には本所要覧と二〇〇一年度特別展の図録を謹呈し、今後の所報・紀要の交換を約した。同所は古くから対日父流の窓口であった杭州における日本研究の拠点であり、今後も継続的な交流が不可欠である。
 また寧波では、王勇氏のご紹介により、寧波博物館建設準備室副主任李英魁氏、天一閣博物館徐炯明氏らと面談を行った。寧波市における明代の日本通交関連史跡について意見を交換した。太平洋に開かれた港町として交流の拠点であった寧波では、現在、前近代のアジア交流の様相を探る「海上シルクロード」プロジェクトが進められており、そのなかで寧波と深い結びつきのある対日通交についても、今後継続して調査する予定であるとのことである。

 (榎原雅治・山田邦明・渡邉正男・及川 亘・藤原重雄・川本慎自・黒嶋敏)

『東京大学史料編纂所報』第38号