40.中村直勝氏蒐集文書の調査

二〇〇三年一月二七・二八日奈良市大和文華館において、同館所蔵双柏文庫中の中村直勝氏蒐集文書の調査を行った。同文書については、『中村直勝博士蒐集古文書』(中村直勝博士古稀記念会編・発行、一九六〇年)によって、ほぼ紹介されているが、なお同書に掲載されなかった文書が存在する。今回の調査では、それらのうち、東大寺旧蔵文書と思われるものを抜き出して調査を行った。その内容は次の通り。冒頭の番号は、双柏文庫の整理番号である。文書名は同文庫の文書名をとった。なお一部東大寺以外のものもある。
137 (年月日未詳、室町前期)東大寺文書収蔵注文断簡
138 (年月日未詳、室町前期)東大寺文書収蔵注文断簡
  *一三七号と一三八号は、もと続紙であるが、一紙ごとに裁断し軸装したもの。この二つは、室町中期の東大寺文書勘渡帳の一部(前後欠)である。応永三〇年頃から嘉吉元年にかけての文書勘渡帳は、一段から一五ないし一六段という整理表記がある。本文書にも、一二段から一四段の表記があるから、この時期のものと考えられる。
164 明応七年連署起請文 (前欠)
 *大仏殿牛王宝印を翻す。裏打により紙背判読不能。『中村直勝博士蒐集古文書』二九五頁以下の説明によれば、同書一〇五号文書明応五年十一月日某寺下臈分衆等連署起請文(前欠)と一連のもの。
166 永正十年十二月十四日成寛起請文
  *北野社関連。北野天満宮牛王宝印を翻す。
595(年月日未詳、鎌倉後期・南北朝期)頼昭大法師以下七名連署起請文(前欠)
  *大仏殿牛王宝印を翻す。また「正倉院残缺 絁一斤」の上書があり、包紙として再利用されていた。

                              (遠藤基郎)

『東京大学史料編纂所報』第38号