52.大韓民国・国史編纂委員会所蔵朝鮮総督府修史事業関係史科の調査

二〇〇一年九月九日から一五日まで、大韓民国京畿道果川市に出張し、国史編纂委員会(京畿道果川市中央洞二-六)所蔵の朝鮮総督府修史事業関係史科を調査した。
 朝鮮総督府が植民地・朝鮮で実施した修史事業は、大正四(一九一五)年七月に着手された中枢院による「朝鮮半島史」の編纂(のちに中止)から、朝鮮史編纂委員会(大正二年一二月、設置)・朝鮮史編修会 (大正一四年六月、官制公布・施行)による 『朝鮮史』の編纂・刊行へと展開していく過程で、東京帝国大学文学部史料編纂掛(現・東京大学史料編纂所)と文部省維新史料編纂会(昭和二四年、文部省所管の維新史料編纂事業は史料編纂所へ移管)の史料蒐集・編纂方式を導入し、さらに中枢院・朝鮮史編纂委員会・朝鮮史編修会は史料編纂掛と協力関係を結んで、相互に史料の謄写委託や採訪調査を実施していた。これは、東京帝国大学教授で史料編纂官及び史料編纂掛事務主任(現在の所長)を務めた経歴を持ち、朝鮮史編纂委員会・朝鮮史編修会の嘱託・顧問となっていた黒板勝美の指導によるものであった。したがって、敗戦前における史料編纂所の活動と密接な関係を有していた朝鮮総督府修史事業の調査・研究は、本所の『大日本史料』等史料集発刊一〇〇年の歩みを史学史的に総括する作業の一環でもある。
 国史編纂委員会が所蔵している朝鮮総督府修史事業関係史料の大半は、『古書目録』(国史編纂委員会、一九八三年一二月)に収録されているが(同目録の分類記号である「中」は旧朝鮮総督府中枢院図書を示している)、一般図書に分類された史料もあるので、『蔵書目録』(国史編纂委員会、一九九〇年七月)も検索する必要がある。なお、これらの史料は、インターネットを利用して検索することも可能である。国史編纂委員会のホームページにアクセスして、「韓国史データベース」→「所蔵資料目録」→「古書」、または「所蔵資料検索」(委員会所蔵図書)で検索できる(目日録に収載されていない史料や番号が変更された史料もあるので、データベースで最新の情報を確認する必要がある)。
 今回調査した史料の概要は以下に記す通りであるが (▼印の史料は業務使用中のため閲覧できなかったもの)、二〇〇〇年七月五・六日に国史編纂委員会を訪問した際にも、(事務書類)「朝鮮史編修会官制関係書類」、(史料探訪復命書)「北支・中支出張復命書」、(史料複本・参考資料類)「日鮮関係史料」・「実録宗教関係事項抜粋要録」など一部の史料を閲覧しているので、松井洋子氏作成の調書により内容を増補した部分がある。(略)
 なお、今回の調査に際しては、李成茂委員長より格別の御配慮を賜ったほか、李薫(史料研究委員)、田美姫(編史研究士)の両氏には種々便宜を図って頂いた。記して厚く感謝申し上げたい。)
(略)



                         (近藤成一・鶴田 啓・箱石 大)

『東京大学史料編纂所報』第37号