天理図書館所蔵史料の調査

『大日本史料』第六編編纂のため、二〇〇一年三月十六日から十八日、奈良県天理市天理大学附属天理図書館に赴き、保井芳太郎氏旧蔵文書のうち興福寺関係史料を閲覽、筆写した。閲覧した史料は、「会所目代方引付」「維摩会次第写」「興福寺院家伝」(二種)、および「権別当記録」「日記抜書」「皇年代記」である。うち「会所目代方引付」は、永和元年から三年にわたる興福寺会所目代の引付で、維摩会をはじめ詳しい記事を載せて、内容豊かな史料である。「興福寺院家伝」は『大日本仏教全書』に収録されるが、『国書総目録』には写本の所在を記さない。保井本のうち一種は『大日本仏教全書』と同内容。本所押小路家本「南都院室伝」も同内容である(藤原重雄氏の御教示)。もう一種は、別内容で東院以下を載せ、他に類本のない可能性もある。
                                 (山家浩樹)

『東京大学史料編纂所報』第36号