大分県立先哲史料館所蔵史料の調査・撮影

平成十一年三月二日より六日までの五日間、大分市の大分県立先哲史料館に出張し、同館所蔵の稲葉家文書の調査・撮影、及び豊後府内藩家老家文書の調査を行った。
 稲葉家文書は、豊後国臼杵藩主(五万石)であった稲葉家に伝来した史料群である。主なものとしては、中世史料では河野家譜(稲葉氏は伊予河野氏の後裔)や足利将軍の御教書などがあり、近世史料では徳川将軍の御内書や老中奉書、歴代藩主苑の諸方書状、藩主が勅使饗応役を務めた際の一件史料などがある。
 この史料群は戦後のある時期に稲葉家の手を離れ、著名な古書収集家である久留米の中村孫次郎氏(屏山文庫)の所有に帰した。その後、大阪の中尾書店、次いで東京の反町茂雄氏(弘文荘)に転売され(この間に、買得や譲渡などによる文書の異同が、多少存在しているようである。平井義人「『稲葉家文書』の伝来と移動」、先哲史料館『史料館研究紀要』第二号、平成九年、を参照)、先哲史料館には平成九年度に購入されている。
 本所では、昭和五十年に中村氏所蔵文書の採訪を行っており、その際に稲葉家文書も中世史料を中心に撮影をしている(『所報』第十一号を参照。『稲葉文書』として写真帳に製本、配架済み。架番号 六一七一・九五—一三)。しかし、先述した様に文書に異同が存するため、当時撮影したものは現史料群の全部ではない。そこで、今回改めて、近世の主要な未撮影文書の調査・撮影を行った次第である。撮影した稲葉家文書とその目録番号は、左記の通りである。
 豊後府内藩家老家文書は、府内藩(大給松平家、二万二千石)の家老職にあった岡本・津久井・玉置の各家に伝来した史料群であり、それぞれ昭和六十一年・同四十九年・同五十七年に県立図書館が購入し、平成七年に先哲史料館へ移管されたものである。今回は、近世前期史料を対象として内容調査を行った。
 なお、史料の調査・撮影に際しては、同館主任研究員の平井義人氏の御世話になった。記して感謝申し上げたい。

『東京大学史料編纂所報』第34号