キリスト教関係書籍の調査

一九九九年一月十一、十二日、京都大学人文科学研究所及び同附属東洋学文献センターにおいて、漢籍を中心とするキリスト教関係書籍の調査を行なった。
 東洋学文献センター所蔵の『輕世金書』(所蔵番号「子��90—D」を以下において簡略に紹介したい。『京都大学人文科学研究所漢籍目録』(一九七九年)上巻四四〇頁上段には、「輕世金書四巻 明西洋陽瑪諾鐸 一九二三年上海土山灣印書館排印本(全一冊)」と示されている。同書には欧文書名 Emmanuel Diaz(junior.1574—1659),De contemptu mundi aureus liber seu operis DE IMITATIONE CHRISTIが記載されており、重刊とされている。このことから、同書はポルトガル人イエズス会士マヌエル・ディアス(漢名・陽瑪諾)が一六四〇年に北京において出版した『輕世金書』の復刻版であろうと考えられる。現在、同版以外の『輕世金書』は、フランス国立図書館に四部が所蔵されていることが確認されている(Bibliothèque Nationale,Catalogue des Livres Chinois,Coréens,Japonais,etc.,Paris,1912.No.7198—7201.)。
 『輕世金書』は、スペイン人ドミニコ会士ルイス・デ・グラナダのスペイン語訳を底本とした漢訳であることが推測される。グラナダのスペイン語訳は、現在マドリードにおいて出版が継続されている『ルイス・デ・グラナダ全集』に収録されている(Edición y Nota Crítica,Álvaro Huerga,Fray Luis de Granada,Obras Completas,Tomo ���,Traducciones I,Imitación de Cristo(Contemptus mundi),Fundación Universitaria Española,Madrid,1998.)。キリシタン版として著名な“Contemptus mundi”(ローマ字本)及び『こんてむつすむん地』(国字本)は、グラナダのスペイン語訳を底本としているとされている。これらスペイン語訳、和訳、漢訳の関係を含めた詳細については、今後の研究に譲りたい。
 (浅見雅一)

『東京大学史料編纂所報』第34号