名古屋市蓬左文庫所蔵近世後期幕政関係史料の調査

一九九四年三月二九日から三〇日までの二日間、名古屋市蓬左文庫所蔵の近世後期幕政関係史料を調査した。名古屋市蓬左文庫には、尾張徳川家旧蔵文書のほかに、美濃高木家〔東家〕文書(旗本・交代寄合)・大炊御門家文書(堂上・清華家)などの家わけ文書が所蔵されている。以下、文書群ごとに調査の概要を報告する。なお、今回の調査にあたって利用した目録は、名古屋市蓬左文庫編『名古屋市蓬左文庫国書分類目録』(名古屋市教育委員会、一九七六年)・名古屋市蓬左文庫編『名古屋市蓬左文庫古文書古絵図目録』(名古屋市教育委員会、一九七六年)・『大炊御門家文書分類目録稿』(付・筧敏生氏執筆「蓬左文庫蔵『大炊御門家文書目録稿』解題」)の三冊である。
 1 尾張徳川家旧蔵文書
 『蓬左文庫国書分類目録』の「九 政治・法制」を参照して、近世後期の幕政研究に有用と考えられる史料を選んで閲覧した。左記閲覧史料の配列も、目録の掲載順にならっている。
〔駿州疑問〕                          一冊 71・5
 徳川家康の作とされる「御遺状御宝蔵入百箇条」(注釈付き)の謂れに、徳川斉昭が序文の形で疑問を付したもの。冒頭に、
  斉昭謹案ニ、右様天下の御為大切之御条目ならバ、御大政へ拘る要路の御役人一統為心得、御写し御預ニ可相成筈なるに、老中の外拝見不相成との義、第一ニ疑敷、又是迄拝見したる御役々も、皆々恐入拝伏セしのミにて敢て熟読もセず、実ニ御自筆と思ひしにやあらん、我家ニも右の写あれ共、今察ニ全く僧侶抔の作なるべし、
云々、とある。
〔柳営家禁令〕                         一冊 中271
 東照宮(徳川家康)から文昭院(家宣)までの間の主要法令を集めたもの。収載法令を抜き書き的にあげれば、

『東京大学史料編纂所報』第29号