愛知県下幕末維新期史料調査

近世史料部維新史料室は、一九八八年十一月十四日から十八日まで、名古屋大学附属図書館・名古屋市蓬左文庫・西尾市立図書館を訪れ、幕末維新期史料の調査をおこなった。調査の概要は左の通りである。
一 名古屋大学附属図書館所蔵高木家文書
 幕府交代寄合で美濃国多良に往していた高木家の文書の内七万七千点余が現在名古屋大学附属図書館に所蔵されており、同館より『高木家文書目録』全五巻が刊行されている。今回の調査はこの目録に従っておこなったが、幕末期の触廻状留・御沙汰書・留守居方御用状・日記等、ほぼ完全に揃っており、幕末維新期の政治・支配を知る上で良質の史料であることを確認した。以下それぞれについて、史料の性格を指摘する。
 (1)御触廻状留(分類番号B4—1)
 これらは大目付から頭四人衆(那須・高木・知久・松平)に出された廻状形式の老中達を留めたものであり、江戸留守居方の写と国許の写が混在しており、時期の重複しているものも多い。ほぼ幕末の全期間の分が揃っており、幕令確認の基本史料として有用である。
 (2)御沙汰書(分類番号D1—1)
 横帳形式で記載は非常に詳しく、人事関係では『徳川実記』には記載されていないことも多く留められている。御沙汰書の復元作業をおこなう際の道具になりうるものである。
 (3)留守居方御用状(分類番号D1—2)
 江戸留守居からの国許役人宛書状を綴ったもの。内容は具体的であり、幕府の動向・諸藩の風聞・家政向用件など多岐にわたる。万延元年の分を例として示すと次の如くである。

『東京大学史料編纂所報』第24号